[基調講演]      近藤 駿介(東京大学大学院工学系研究所教授)

        省エネ行動 国民に問う

                読売新聞(2001年10月26日)


<その3>

[7]
 民生、産業、運輸の各部門をみると、産業では73年の石油危機の時か
らほとんどエネルギー消費が増えていない。省エネ努力に加え、産業構造
の転換が大きく寄与している一方、民生や運輸はどんどん消費量が伸びて
いる。                              
 エネルギー消費分野を大きく3つにジャンル分けすると、民生、産業、運輸となる。消費量の多さからすれば、産業分野が最も多いが、この分野、73年の第一次オイルショック当時からエネルギー消費量は増えていないのである。産業界での省エネ努力はすでに効果を発揮しているのである。

 増えているのは、民生と運輸の分野で、エアコンなど家電製品の普及が著しい民生、つまり我々個人の暮らしの中でのエネルギー消費量はとどまることを知らないほど、急増しているのである。

 また、運輸の分野でも、車の普及、海外旅行者の増加、電車による通勤者の増加などを考えると、オイルショック以降でも、増えることはあっても減るこはなかろうと、容易に想像はつくだろう。

 だから、わが国の中で、エネルギーの節約をしなければならないとするなら、個人の家庭生活、個人の社会活動において省エネルギーに向け、大いに創意工夫、努力をしなければならないのである。

[8]
 地球温暖化防止を目指した京都議定書を順守するには、石油換算で4億
キロ・リットルにのぼるエネルギー消費のうち、5千3百万キロ・リット
ルを減らす必要がある。いかにして国民に省エネ行動を求めるかが今後の
課題となる。東京以外では車で出歩き、道路を歩く人がいないような生活
が普通で、まだ大型化、重量化、高度化を優先する傾向がある。    
 2010年の時点での温室効果ガスの排出量を、1990年当時のレベルから6%削減することを日本は「京都議定書」で公約したが、それを遵守するには、石油換算で13%減らす必要がある。

 この省エネ努力は、我々一人ひとりがせねばならないのであって、パラグラフ[7]で論じたように、産業界に最早期待できないのである。その国民も、都市部の市民ではなく、「車で出歩き、道路を歩く人がいない」生活をしている地方の人達である。

 省エネ努力をするのは、エネルギーの絶対消費量が多い分野というより、効率の悪い消費をしている分野の人達なのである。

 「みんなで省エネ努力をすれば、原子力なんて止めたって日本はやっていける」と主張している、そう君、貴方自身および貴方のご家庭でどれだけ省エネしていますか?

[9]
 水力や太陽光、風力といった再生可能エネルギーは持続可能な社会の実
現に貢献するのは明らかだが、供給が不安定で、風が吹かない時や曇った
時に供給する待機電力が必要になる。経済性や安定性の観点から、電気の
供給計画にそう多くは組み入れられないというのが大方の意見だ。   
 再生可能エネルギー推進論者の方は、特にこのパラグラフを熟読してもらいたい。我々の反論は、この4行で十分と考える。

[10]
 原子力発電を今後、増設しないとなると二酸化炭素の排出抑制のため何
らかの強い経済的措置を導入しなければならない。結果として経済成長を
抑制し、なかなか社会の痛みが大きいというのが結論だ。       
 原子力反対論者の方は、特にこのパラグラフを熟読してもらいたい。我々の反対論者への反論はこれで十分であろう。

[11]
 原子力発電の課題は、安全確保に対する国民の信頼感の確立だ。効果的
で効率的な安全対策がとられていることを、行政が国民に伝えなければな
らない。放射性廃棄物についても、安全に管理されていることを国民に分
かってもらう努力が足りないのではないか。立地地域の住民や原子力施設
の職員と消費者とが、互いに相互依存関係を確認しあうことが今後、極め
て重要になっていくだろう。                    
 日本の原子力関係者は、我々を含め、特にこのパラグラフを熟読し、反省し、明日への活動の指針としなければならないと考える。

          「G研」代表