[基調講演]      近藤 駿介(東京大学大学院工学系研究所教授)

        省エネ行動 国民に問う

                読売新聞(2001年10月26日)


<その2>

[3]
 エネルギー問題をめぐって「もう経済成長はいけない」という議論もあ
るが、民主主義や自由主義は成長によって活力が生まれており、成長とい
う概念を捨ててはいけない。エネルギー消費量は効率向上で減らせるし、
エネルギー消費量当たりの二酸化炭素の排出量を減らすことも科学技術の
力で可能だ。                           
 パラグラフ[3]は、特に日米欧などの先進工業国は、エネルギー多消費の経済成長を目指してきたが、「もうこれ以上経済成長は不要」という主張への、近藤先生の反論である。つまり、経済成長にブレーキをかければ、民主主義や自由主義の成長に活力はなくなるから、常に「成長」「向上」といった概念を捨ててはならない、と示唆している。

 エネルギーの消費量は、熱効率を上げることで減らせるし、エネルギー消費量を減らさなくても二酸化炭素の排出量を減らすことは、技術的に可能になってきている。

[4]
 わが国のエネルギー施策で重要なのは、第一が経済性、第二が供給の安
定性、三番目が環境適合性だ。この三つを確保できるエネルギー需給シス
テムを実現するため、何をすべきかが政策のポイントとなる。グローバル
化が進む中で、価格が国際相場とかけ離れないよう、供給システムの効率
化や競争環境の整備が重要だ。ただ、効率化で価格が下がり、エネルギー
をジャブジャブ使うというのは問題で、化石燃料の使用量を増やさないよ
う配慮しなければならない。                    
 小資源国、日本のエネルギー政策を立てるに際して、最も重要なポイントは、

 1.経済性==つまり、できるだけ安いエネルギーが望ましいのは当然。

 2.供給の安定性==すぐに枯渇したり、輸入量が制限されるようでは困るのだ。

 3.環境適合性==いくら安くて、じゃんじゃん買ってこられても、環境を著しく汚染するようなエネルギー源では困るのだ。

 これら3つの条件がバランスよく満たされるエネルギー需給システムが組み込まれていなければならない。ただ、エネルギー問題や環境問題は、国内問題にとどまらず、グローバル、すなわち全地球的に考えなければならないから、価格の国際相場や、国際協調や競合、競争といった環境整備も重要である。

 ただ、こういった環境整備でエネルギーの効率化が進み、価格が下がると、エネルギーの使用量が増える傾向が見られるが、とくに化石燃料の使用量だけは増やさないような配慮が重要になってこよう。

[5]
 環境保全の観点からは、省エネルギーを推進して単位生産当たりのエネ
ルギー量を減らし、エネルギー依存度の小さい社会に変えることが第一の
方針。第二は原子力や再生エネルギーといった非化石燃料の割合を増やし
て二酸化炭素の発生量を減らす、あるいは二酸化炭素を回収するシステム
を築くことだ。                          
 無駄なエネルギー消費を減らしたり、エネルギーの効率化を図ることによる省エネルギーを進めることは、環境保全の観点からも重要だから、エネルギー依存度を下がる社会システムに変えていかなければならない。

 環境保全のためのもう一つの選択は、原子力や再生エネルギーといった非化石燃料の割合を増やす方法がある。これによって二酸化炭素の排出量を減らすことができる。また、二酸化炭素を回収する技術の開発も進めなければならない。

[6]
 供給安定性の確保については、国産エネルギーを増やし、22%と先進
国の中でも最低のわが国のエネルギー自給率を高める。石油依存度を下げ、
天然ガス、原子力、再生エネルギーの割合を増やすことが重要だ。   
 エネルギーを安定して供給するには、海外への依存度を下げる、つまり国産エネルギーを増やしてエネルギー自給率を高めることだが、具体的には、石油依存度を減らし、天然ガス、原子力、再生エネルギーの割合を増やすことだ。

 とくに原子力は、ウラン燃料を一旦原子炉の中へ装荷すると、1年半は優に発電を続けることができるから、最も安定した供給システムといえよう。また、原子炉の中で発生したプルトニウムは、再処理すれば燃料として再利用できるから、原子力は国産エネルギーに転換させることも可能なのだ。

            (次につづく)