■これは同感できるG情報■


日本経済新聞(2010年12月28日)


<経済教室>


[ポスト京都議定書の課題(上)]


     『原則貫き孤立』は避けよ


                    蟹江 憲史(東京工業大学准教授)


(その3)


   <本文転載>


<ポイント>

                               ○「京都議定書延長」への日本の反対に批判                ○受け入れ可能性のある代替案提示も必要                 ○民間セクターやNGO巻き込み制度設計を              




 まず実効性ある提案

                                                             

         大局的な戦略・戦術を

                                                      メキシコで12月11日まで開催されていた第16回国連気候変動枠組み  条約締約国会議(COP16)は、温暖化ガスの削減について、京都議定書  に続く国際制度枠組み交渉の結論を1年後に先送りして閉幕した。米国・中  国といった大量排出国に温暖化ガス削減義務を課すような「ポスト京都」合  意の見通しが立たない中、対策の空白期間を作らないよう、京都議定書の下  での削減義務を延長するかどうかが一つの論点だった。しかし、日本は延長  に強く反対し、対策の機運をそいだとして批判を浴びた。果たして交渉戦略  は正しかったのか、きちんと検証すべき時が来ている。                                                世界各国の温暖化ガス削減の中期目標をみると、1990年比25%削減  という日本の目標は、ノルウェーや英国などと並んで世界最高レベルの意欲  的なものである。本来は称賛されてしかるべき日本がなぜ批判の嵐にさらさ  れねばならなかったのか。原因は、日本の交渉戦略、戦術に問題があったか  らだとみる。                             




   ◆◆◆  ◆◆◆

                                                              日本の目標には前提条件がある。「米国や中国といった主要排出国も意欲  的目標を掲げるような一つの枠組み」の構築である。現在、京都議定書の下  で削減義務を負う国々の排出量は、合わせても世界の27%にすぎず、米中  が参加しない枠組みが有効な温暖化対策となりうるか疑問だからだ。しかし  米国が京都議定書を批准する可能性はほぼゼロに等しい。中国のような新興  国が国際的削減義務を負う可能性も低い。だから議定書を延長しても前提条  件を達成できない。これが日本の「延長反対」の根拠だ。                                               しかし注意すべきは、前提条件を達成できない理由は日本にはなく、他国  にあるという点だ。批判の矛先は、意欲的目標を掲げない国々に向けられて  しかるべきである。つまり、日本は意欲的対策をとる準備はあるが、他国の  目標が低いために国内産業界を説得しきれないとして、国際世論の批判の矛  先を米国などに向けさせるというのが、国益を守る戦略であろう。日本だけ  の25%削減は経済利益を損ねるとの「内向き」のプレッシャーを外向きに  切り替えることで、日本は環境にやさしいリーダー国であるとのイメージを  確立することは、世界で活動する日本の産業界にもプラスに働くソフトパワ  ーとなるはずだ。                                                                 実は今回、批判の矢面に立つことのなかった欧州連合(EU)も「京都議  定書延長」には日本と同様の前提条件を設けている。しかし、条件を前面に  出さずに交渉することで、多国間外交で多数を占める途上国や非政府組織   (NGO)といった国際世論を味方につけている。交渉力学や、逓減する日  本の存在感に鑑みれば、原則を貫き、孤立するのは得策ではない。                                           こうした交渉の構造は、97年のCOP3京都会議でも表れていた。EU  の巧みな交渉術に「日本が不当に高い目標をのまされた」という見方は、政  府や産業界に根強く残っている。同じことを繰り返さないためには、交渉を  有利に進め、国際政治における日本のソフトパワーを高めるための戦略・戦  術面こそ、いま検討すべきであろう。EUは、COP3交渉前に交渉シミュ  レーションまで実施し、準備に余念がなかった。             



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