<電気新聞>(2001年9月6日)

・−[ウェーブ=時評]−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−・

       京都議定書の欺瞞

                                中村 政雄

 
<その3>


 「京都議定書の欺瞞」その3に中村氏が上げられたのは「排出権の売買」である。それも引用しておこう。

 排出権の売買もおかしい。日本がロシアから排出権を買ったとする。そ
の分だけ日本はCO2を減らさなくてすむわけだから、実質的にはその量
だけCO2を出せることになる。だから排出権が売買されるほど、CO2
の排出量は増える。                        
 ロシアの削減目標はゼロで、発展途上国のように増やしてもお構いなしではないが、1990年レベルを維持することになっている。

 ロシアの経済が今後2010年までに飛躍的に伸び、それに引きずられてエネルギーの需要も増えてCO2の放出量も大幅に伸びる、などといったケースは、失礼ながらロシアの場合、考えられない。

 もし、ロシアの温暖化効果ガスの放出量が、1990年レベルより自然に減ったり、また削減努力して減ったりした場合、その削減分はロシアの「排出権」として売ってもよろしい、となっている。

 日本など、1990年にはすでに、省エネ努力もし、環境への配慮も最大限やってきた国が、いくら努力しても、その国に科せられた「削減努力目標」の達成が困難となった場合、排出権を持っている国から買ってきてもいいですよ、となっているのだ。

 A君の家庭は教育熱心で、試験の点数を80点は取ってらっしゃいと言われていた。B君の家庭は放任主義で、60点以上なら何も言われない。で、今回の試験で、A君、B君共に70点だった。そこで、A君はB君から10点分売ってもらい、A君は80点、B君は60点に、先生にお願いして操作してもらって、両君は両親から叱られることなく平穏に終わった。

 いくら教育現場が荒れていようともこのような取引の片棒をかつぐ先生はいないだろうし、決して許されるものではない。しかし、地球温暖化防止という各国に科せられた、いわば厳しい試験には、インチキ取引が許されているのである。このような安易な考えで地球温暖化防止などといった地球規模の大事業は、実現できるはずはない。

 さて、「気候変動枠組条約締約国会議」という何ともセンスのない長ったっらしい名称の国際会議は、今後、どのようになるのか、中村氏の文章の最初のパラグラフに戻って引用してみよう。

 モロッコのマラケシュで10日に、地球温暖化防止のための国際会議 
(COP7)が開かれる。このあと2002年の京都議定書発効に向け、
日本国内でも温室効果ガス削減目標達成のための手続きが進められること
になる。                             
 COP7はもう始まっている。日本はどうすればいいのか、これは中村氏の最後のパラグラフに書かれている。

 COP6は、米国と欧州の対立する思考の弁論大会だった。その間に妥
協はない。どちらの哲学が勝つか負けるかの大会だった。日本が両者の間
に立って妥協させることは無理だった。日本は日本らしい考え方を展開す
べきだ。CO2の森林吸収量割り当てを増やすことに努力するだけでは、
温暖化は止まらない。                       
 「日本は日本らしい考え方を展開すべきだ。CO2の森林吸収量割り当てを増やすことに努力するだけでは、温暖化は止まらない」

 その通りだ。ここでいう「日本らしい考え方」とは、言うまでもない「原子力推進」である。

 再度いおう、この中村氏の「京都議定書」に関するご意見は素晴らしい。我々は双手を上げて賛同するものだ。

 ただ、惜しむらくは、この文章が業界紙である「電気新聞」に掲載されたもので、でき得れば中村氏の古巣「読売新聞」など、一般紙に投稿していただき、一般の方々にも是非読んでもらいたい一文である。

         「G研」代表