◆電力VS.ガス 家庭奪い合い
「みなさん、ツインソーラーをご存じですか」。キャスターの滝川クリス
テルさんがほほ笑みながら語りかける。
「先生、ダブル発電って何ですか」。若手俳優の妻夫木聡さんが問いかけ
る。
いずれも今春から首都圏で始まったCMだ。
東京電力が起用する滝川さんは、太陽光発電と、電気で空気中の熱を集め
る高効率給湯器「エコキュート」の組み合わせを「ツインソーラー」とPR。
東京ガスの妻夫木さんは、太陽光発電と、都市ガスから電気とお湯を作る燃
料電池「エネファーム」を「ダブル発電」と宣伝する。
家庭の暖房と給湯をめぐり、エネルギー業界の競争が過熱している。日本
の二酸化炭素(CO2)排出量の約14%は家庭部門(自家用車は除く)。
家でのエネルギー使用の5、6割を暖房と給湯が占める。
優位に立つのは資本力と営業力で勝る電力業界。その武器が「使う電気の
約4倍のエネルギーを引き出す」というエコキュートだ。料金が昼間の約3
分の1以下と、格安に設定された夜間を中心に水を温める。3年前に自宅を
「オール電化」にし、エコキュートをつけた大阪府阪南市の檜垣佐恵子さん
(60)は「光熱費は春や秋で月2千円、冬は7千円も安い。電気代を心配
せずに使える」。
新築住宅のオール電化の割合は今、東京ガス管内で1割強、大きな都市ガ
ス会社がない四国で8割近くを占める。
危機感を抱いたガス業界は、人気が高い太陽光発電に目を付けた。昨年1
1月から余剰電力を高く買い取る制度が始まり、昨年度は前年度の2.6倍
と出荷が急増。ガス業界は「太陽光発電は今後、住宅のエネルギー設備とし
て欠かせない。ダブル発電でその時流に乗りたい」という。
電力とガス業界がアピール合戦を繰り広げるが、この競争が必ずしも家庭
の省エネ意識に応えていない。
東京電力は、新型ガス給湯器「エコジョーズ」を使ったガス・電気の併用
よりも、エコキュートを使用したオール電化の方が、CO2排出が少ないと
試算。しかし東京ガスの試算では逆に増えるという。どちらが本当なのか。
省エネ度の評価をしている建築研究所の澤地孝男・環境研究グループ長は
「エコキュートは、使い方次第で効率が異なる。省エネモードでは高効率だ
が、深夜電力だけで湯をつくり昼間電力を使わないモードでは、ガス機器よ
り効率が落ちる傾向にある」。
松村敏弘・東京大教授は「電力と都市ガスの今の競争は、切磋琢磨(せっ
さたくま)というよりも、消費者の囲い込みだけが目的。エコキュートもガ
スと組み合わせればさらに効率がいいのに、オール電化の道具と位置づけら
れ、潜在能力を生かしきれていない。電力も都市ガスも、基本的に独占市場。
長期的な視点で、社会全体の効率を真撃(しんし)に考える責任がある」と
指摘している。
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