■同感できるG情報■


朝日新聞(2010年5月24日)


<エコウオーズ>


[家庭の選択]


         <1面>エアコン省エネ お得?


         <3面>太陽光発電で売る

(その4)


   <3面の本文転載>

  ◆電力VS.ガス 家庭奪い合い

                                                  「みなさん、ツインソーラーをご存じですか」。キャスターの滝川クリス  テルさんがほほ笑みながら語りかける。                                                       「先生、ダブル発電って何ですか」。若手俳優の妻夫木聡さんが問いかけ  る。                                                                       いずれも今春から首都圏で始まったCMだ。                                                    東京電力が起用する滝川さんは、太陽光発電と、電気で空気中の熱を集め  る高効率給湯器「エコキュート」の組み合わせを「ツインソーラー」とPR。 東京ガスの妻夫木さんは、太陽光発電と、都市ガスから電気とお湯を作る燃  料電池「エネファーム」を「ダブル発電」と宣伝する。                                                家庭の暖房と給湯をめぐり、エネルギー業界の競争が過熱している。日本  の二酸化炭素(CO2)排出量の約14%は家庭部門(自家用車は除く)。  家でのエネルギー使用の5、6割を暖房と給湯が占める。                                               優位に立つのは資本力と営業力で勝る電力業界。その武器が「使う電気の  約4倍のエネルギーを引き出す」というエコキュートだ。料金が昼間の約3  分の1以下と、格安に設定された夜間を中心に水を温める。3年前に自宅を  「オール電化」にし、エコキュートをつけた大阪府阪南市の檜垣佐恵子さん  (60)は「光熱費は春や秋で月2千円、冬は7千円も安い。電気代を心配  せずに使える」。                                                                 新築住宅のオール電化の割合は今、東京ガス管内で1割強、大きな都市ガ  ス会社がない四国で8割近くを占める。                                                       危機感を抱いたガス業界は、人気が高い太陽光発電に目を付けた。昨年1  1月から余剰電力を高く買い取る制度が始まり、昨年度は前年度の2.6倍  と出荷が急増。ガス業界は「太陽光発電は今後、住宅のエネルギー設備とし  て欠かせない。ダブル発電でその時流に乗りたい」という。                                              電力とガス業界がアピール合戦を繰り広げるが、この競争が必ずしも家庭  の省エネ意識に応えていない。                                                           東京電力は、新型ガス給湯器「エコジョーズ」を使ったガス・電気の併用  よりも、エコキュートを使用したオール電化の方が、CO2排出が少ないと  試算。しかし東京ガスの試算では逆に増えるという。どちらが本当なのか。                                       省エネ度の評価をしている建築研究所の澤地孝男・環境研究グループ長は  「エコキュートは、使い方次第で効率が異なる。省エネモードでは高効率だ  が、深夜電力だけで湯をつくり昼間電力を使わないモードでは、ガス機器よ  り効率が落ちる傾向にある」。                                                           松村敏弘・東京大教授は「電力と都市ガスの今の競争は、切磋琢磨(せっ  さたくま)というよりも、消費者の囲い込みだけが目的。エコキュートもガ  スと組み合わせればさらに効率がいいのに、オール電化の道具と位置づけら  れ、潜在能力を生かしきれていない。電力も都市ガスも、基本的に独占市場。 長期的な視点で、社会全体の効率を真撃(しんし)に考える責任がある」と  指摘している。                            




  ◆忘れられた太陽熱・小型風力

                                                  太陽光発電に関心が集まるなか、忘れられているのが太陽熱だ。                                           太陽の熱で水を温める単純な仕組み。エネルギー効率が太陽光発電の約4  倍と高く、屋根の小さい家も利用できる。「夏は水温は60度超。ガス代を  大幅に節約でき、10年かからず元がとれた」。太陽熱温水器を利用する川  崎市の鈴木昭男さん(67)はいう。                                                        1980年に国内で80万台も売れたが、違法な訪問販売による問題など  が起き、今は年間約4万台。一方、ドイツや中国での導入は急増し、先行し  ていた日本が取り残されている=グラフ。だが最近、東京都や横浜市が補助  金制度をスタートさせるなど、ようやく光が当たり始めた。                                              苦境に立つのは家庭用の小型風力発電だ。昨年11月、太陽光は電力会社  の買い取り価格が1キロワット時当たり48円と倍増したが、価格設定をめ  ぐる電力会社とガス会社の争いのあおりで、家庭風力は12円程度に半減し  た。千葉県柏市の川瀬慎一さん(40)と美幸さん(41)夫妻は、自宅に  家庭用風車をつけようかと考えているが「同じ自然エネルギーなのに、太陽  光と風力でなぜ価格が違うの?」。                                                         太陽より風に恵まれている地域は少なくない。地域や生活形態に合った政  策を進めなければ、消費者のエコ意識に、冷や水を浴びせかねない。                       (桜井林太郎、編集委員・竹内敬二)




  ◆消費者側への情報必要

                                                  「温暖化防止」という大義名分のもと、家庭は売り込み攻勢にさらされて  いる。                                                                      「オール電化」の背景には、原子力を柱とする国のエネルギー政策がある。 電力業界は、原子力発電の割合を現在の約30%から19年度に41%にす  る計画だ。エコキュートの普及は、余剰気味になる夜間電力の安定的な需要  づくりを狙っている。                                                               業界の競争で家庭の給湯・冷暖房機器は、高性能で高価格になった。だが、 性能の公平な比較や、高価な機器に見合った利点があるかなど、消費者側に  立った情報が足りない。政府も「30年までに家庭の排出を半減する」とい  うなら、良質で多様な省エネ技術の選択肢を示し、買った場合は、何年かで  元がとれる制度を充実させるべきだ。