■同感できるG情報■


日本経済新聞(2010年2月17日)


<国際2面>


[30年ぶり政府保証]


     原発受注競争、米で加速


(その1)


 かつては世界における原子力産業をリードしてきたアメリカが、スリーマイル アイランド(TMI)原発での事故と核兵器拡散に神経質な大統領(カーター) の出現で、原発の新規建設がパタッと止まっていた。それでもその間、それまで に建設された100基以上の原発が稼働し続け、アメリカ経済を支えてきたので ある。

 TMI原発事故から30年が経過した。その間、地球温暖化が進み、それを阻 止できるエースとして再び脚光を浴びるようになって、批判的といわれた民主党 のオバマ政権でさえ原子力推進に舵を切らざるをえなくなったのである。

 「オバマ政権は風力発電や太陽光発電など代替エネルギー開発に積極的だっ たが、それらは世界最大級のエネルギー消費国である米国を支えるにはなお 力不足だ。ブッシュ前政権同様、「脱・石油」を目指すオバマ政権にとって 原発開発は避けられない課題だった。温暖化対策法案の審議が難航するなか、 原発推進派が多い共和党との距離を縮める狙いも裏にはある」

 エネルギー消費大国の米国でなくても、風力発電や太陽光発電では国の経済を 支えるには「力不足」は明らかである。それに気付いたオバマ政権は、「原発開 発は避けられない課題」と位置づけたようである。「原発推進派が多い共和党と の距離を縮める狙い」といった見方もあるようだが、日本の連立政権の中にあり ながら頑なに反対の姿勢をとり続けている社民党には是非見習ってもらいたい政 治的判断といえよう。

 「一方、原発関連産業にとって発注元の電力会社に資金面の後ろ盾ができた ことは事業拡大の好機にほかならない。米政府が今回、電力大手サザンカン パニーのボーグル原子力発電所2基の建設に融資保証を決めたことについて、 米国に進出している日本の原発機器メーカーは『これを機に米国での原発建 設が前進することを期待している』(東芝)と歓迎する」

 アメリカの電力会社は、独自に原発建設資金を調達できる企業が少ないため、 そういった電力会社が原発を建てようとすると、連邦政府による資金面の後ろ盾 がどうしても不可欠になる。融資保証が受けられる新規建設原発の基数が増えつ つあって、原子力産業界には歓迎ムードだというが、政府の後ろ盾など期待薄の 日本にとって、羨ましい限りである。

 アメリカ国内の原子力産業界は、過去30年間に及ぶ低迷期の間、情況は大き く変貌していたのである。かつては、原子力発電プラントメーカーとして、ゼネ ラル・エレクトリック(GE)、ウェスティングハウス(WH)、コンバッショ ン・エンジニアリング(CE)、バブコック&ウィルコックス(B&W)といっ た主要4社を中心に、周辺の関連会社も入れて米国の原子力産業界は隆盛を極め ていたのである。

 ところがいまやGEとWHの2社が残るのみで、そのうちのWHは日本の東芝 の子会社になってしまったのである。かつてはその2社は日本企業を教える立場 であったが、アメリカ国内での原発建設がストップしていた間に、立場は逆転し てしまったということになる。

 「原発という「政治色」を帯びやすいビジネスヘの懸念も消せない。経済停 滞が続く米国では保護主義的な「内向き発想」が強まりかねないムードが絶 えず残る。東芝系WHや米ゼネラル・エレクトリック(GE)と組む日立製 作所などは別にして、他の外資メーカーにとっては米国市場で思わぬ苦戦を 強いられてもおかしくはない」

 「政治色を帯びやすいビジネス」という点に関しては議論が分かれるところで あろう。しかし、原子力に限らず、自動車産業などでも、国内企業が優遇される のは国民の心情として当然の成り行きではないだろうか。

 それよりも順調に成長してきた日本の企業が、海外での受注が多くなり、技術 者の多くを海外の現場に派遣せねばならなくなれば、日本国内の建設やメンテナ ンスなどでおろそかになりやしないか案じられる。

 資源の少ない日本ではとくに、エネルギー供給面の当然として、地球温暖化問 題においても、原子力はますます必要不可欠になるのは確かである。

              「G研」代表

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