提言3 「安全」「環境」の技術、海外展望の武器に
茨城県東海村にある日本原子力発電の総合研修センター。2009年12
月、カザフスタンの原発技術者4人が、制御室を模した運転シミュレーター
に真剣なまなざしで向かい合っていた。
「今から制御棒を挿入します」。定期検査のため、出力を下げて停止させ
る設定だ。バルブを閉めてタービンへの蒸気量を減らし、炉の圧力や温度を
下げていくと、制御棒が自動挿入される。
ここで質問が飛んだ。「制御棒を手動で操作してもいいのですか」「マニ
ュアル操作もできるが、人間の判断より自動操作の方が温度変化に適切に合
わせられます」。
日本は原発導入を計画している国からの研修生受け入れに本腰を入れ始め
た。2009年3月に日本原子力産業協会が海外人材を受け入れるための原
子力国際協力センターを設立。各関係機関が個別に手がけ、統一性を欠いて
いた海外人材の支援を一本化し、より体系的に推進する狙いだ。
日本の原発の強みは、その安全技術と運転ノウハウである。新潟県中越沖
地震で証明した耐震技術は世界から称賛された。計画外停止の頻度は世界で
最も少ない水準だ。原発の初稼働から40年弱、大規模事故を起こさないよ
う、厳しい安全基準をクリアし続けてきた蓄積が競争力につながる。
原発導入を計画している国にとって、こうした技術やノウハウは垂涎の的。
新設案件の入札では、建設だけでなく運転指導を含めた提案を要求するケー
スが増えてきているという。
日本原子力産業協会の服部拓也理事長は「フランスは、売らんかなという
姿勢だが、日本の産官は『安全』を輸出するという意識が極めて強い。これ
を強みとすべきだ」と強調する。
原子力国際協力センターを設立する契機となったのは、「ベトナムの原発
計画が動き出し、日本の技術を積極的に売り込んでいこうという段階に入っ
たからだ」(服部理事長)。
ベトナムは南部のニントアン省に4基、合計400万キロワットの原発を
建設し、2020年から順次稼働させる計画を打ち出している。
このため、日本政府はベトナムを原発輸出の重点国と位置づけているが、
フランスも意欲を示す。グエン・タン・ズン首相は日仏を競わせる考えで、
その選定条件として安全運転に向けた人材育成支援を重要視しているという。
こうした「ソフトパワー」を発揮するには電力会社の協力が欠かせない。
既に東京電力は海外事業に意欲的な姿勢を見せている。国内偏重の電力会社
を国際商談の舞台に引き込むことが、ベトナム争奪戦で重要なカギを握る。
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