【同感できるG情報】


日経ビジネス(2010年1月18日)


<特集>


   原発漂流


        民主が抱えるもう一つの「普天間」


(その7/12)


<政策編・続き>


 <本文転載>


[scene4.フランス・ピュール]

             

苦悩する原子力大国

                                                        パリから東に車で5時間。シャンパンで有名なシャンパーニュ地方にほど  近い集落ピエールに、高レベル放射性廃棄物の処分候補地がある。フランス  放射性廃棄物管理機構(ANDRA)はそこに地下研究所を作った。                                          昨年12月21日。降り続く雪で辺りには一面、銀世界が広がっていた。  研究所は小さなコンクリート建屋の地下500mにある。                                               広報担当者は無数のトンネルを縦横無尽に動き回りながら研究内容を説明  した。「様々な計測器を使って放射性廃棄物の地層への影響などを調べてい  る。ここは粘土層に覆われており、地層の変化が非常に少ない」。                                           処分地確定までの道のりは長い。1970年代から最終処分地を探し、8  8年には4カ所の候補地に絞り込んだが、91年には住民の反対運動で20  年の成果がすべて白紙になった。そこで最終処分ではなく、とりあえず10  0年保存する“埋設管理地”を決める新法を成立させ、94年にようやくビ  ュールなどの候補地を決めた。                                                           フランスのローカルテレビではビュール周辺での反対集会や数百人規模の  デモの様子が放映されている。市長は地元経済の衰退を食い止めるために処  分地の誘致は必要だと説くが、地元の農家を中心に反対の声は絶えない。日  本の原発関連施設と同じ構図だ。                                                          ANDRAのマリー・クロード・デュプイCEO(最高経営責任者)も、  「最も悩ましいのは住民の反対運動だ。外部の反対派が住民を巻き込もうと  する」と認める。2015年までに詳細な処分地を決め、2025年には処  分が始まる予定だ。地元住民を説得できなければ、大きな計画修正を迫られ  る。                                                                       日本が手本とする原子力大国。そのフランスですら苦悩の連続なのだ。                                        課題は、核燃料サイクルだけではない。フランスの原子力国策会社、アレ  バがいみじくもそれを教えてくれた。                  




[scene5.フランス・パリ]

              

アレバの野望と誤算

                                                        クリスマスに華やぐパリ中心地にあるアレバ本社。ドミニク・モックリー  副社長は原発の未来を力強く語った。「2030年までに世界で150基の  需要がある。そのうち、アレバは3分の1を受注する」。同社の強みは新型  大型炉と、燃料から再処理まで一気通貫で手がける業容の広さだ。                                           しかし質問がフィンランドに及ぶと途端に歯切れが悪くなった。「次の建  設からはこの経験を生かせる」。                                                          同社は2003年、フィンランドの電力会社テオリスーデンボイマ(TV  O)から新型炉を30億ユーロ(約4000億円)で受注した。この案件を  新型炉の世界展開の橋頭堡と位置づけていたが、初っぱなからつまずいた。  コンクリート強度に欠陥が見つかるなど度重なるトラブルで、2009年の  完成予定は2012年まで延びてしまった。                                                     本格稼働の遅れについて、発注元のTVOはアレバに24億ユーロの違約  金を請求した。アレバは工事遅延のコスト増加に対応するため、合計で17  億ユーロの引当金を計上している。                                                         工事の遅延はアレバ特有の問題ではない。新型原子炉は今や150万キロ  ワット級に巨大化し、原発建設の経験がない国では、思わぬトラブルが起こ  るリスクは高まっている。                       




[scene6.コペンハーゲン]

              

世界が恐れる核拡散

                                                        昨年末、デンマークのコペンハーゲン。第15回国連気候変動枠組み条約  締約国会議(COP15)に、鳩山由紀夫首相やバラク・オバマ米大統領ら  首脳が集結する中、異色の会見があった。                                                      「もっと多くの国が原発を導入すれば温暖化問題は解決する。我々は原発  を新設する」。イランのアハマディネジャド大統領が熱弁をふるった。                                         核兵器への転用を懸念し、国際原子力機関(IAEA)が低濃縮ウランを  海外に送り、加工済み燃料を戻す仕組みを提案したが、イランは拒否。欧米  は経済制裁を強化する構えだ。                                                           核拡散防止条約(NPT)は米国とロシア、英国、フランス、中国の5カ  国にしか核兵器の保有を認めていない。核兵器を保有しながら、NPTに加  盟していないインドには、本来なら原発を輸出できないが、経済成長が見込  める同国には、米ロが熱い視線を注ぐ。                                                       米国はインドと原子力協定を結び、核兵器への転用を監視しながら原子力  技術を売り込む考え。ロシアも同様だ。                                                       一方、直嶋正行経産相は「米国がインドと協定を結んだから、すぐに日本  も、ということにはならない。慎重な検討が必要だ」と語る。唯一の被爆国  日本にとって、世界の「ダブルスタンダード」に対処するのは至難の業だ。                                       関係者の期待ほど立地が進まないリスクも大きい。国際エネルギー機関   (IEA)の予測では、2030年の原発の発電量は最大で2007年の約  2倍の5470テラワット時(テラは1兆)に達し、電源に占める割合は1  8.2%まで高まる。だが、別のシナリオでは、2030年の発電量は36  67テラワット時にとどまり、割合も10%に落ち込む。市場拡大を阻む様  々なリスクがあるからだ。                                                             日本では連立に入った社会民主党が「脱原子力」の方針を変えておらず、  米軍普天間基地の移転問題を巡る鳩山政権の迷走を想起させる。2008年  9月のリーマンショック以降、最大市場の米国で原発建設の資金調達が難し  くなり、核廃絶を志向するオバマ政権の原発政策も見えてこない。日本エネ  ルギー経済研究所の村上朋子研究員は、「2030年までの新設は30基ど  ころか10〜15基にとどまる」と見る。もし再び大きな事故が起きれば、  世界的に反対の世論が高まり、建設は行き詰まる。                                                  各国とも核燃料サイクルや原子炉建設、核不拡散の問題に明確な出口は見  いだせていない。原子力ルネサンスが喧伝される裏で、原発の不確実性は一  層高まり、企業はリスクと向き合わざるを得なくなっている。       



(次ページにつづく)