【同感できるG情報】


日経ビジネス(2010年1月18日)


<特集>


   原発漂流


        民主が抱えるもう一つの「普天間」


(その6/12)


<政策編・続き>


 <本文転載>


[scene2.青森]

                   

17回も完成延期

                                                        下北半島に横殴りの雪が降りしきる昨年12月下旬、六ヶ所村の使用済み  核燃料の再処理工場の中央制御室。70人の作業員が慌ただしく動き回って  いるが、プラントは止まったままだ。                                                        電力会社が出資する日本原燃は再処理工場を1997年に完成させるはず  だった。しかしトラブルの続発で完成を17回も延期した。次の完成予定は  今年10月で、MOX燃料を作る工場もようやく今年着工する予定であるた  め、電力会社は使用済み燃料の処理をフランスに委託している。                                            建設コストも雪だるま式に膨らんだ。構想当初は6900億円と見積もっ  たが、2004年時点の試算では3倍の2兆2000億円に達した。日本原  燃や電力会社は否定するが、その後の遅れでコストがさらに膨らむ可能性も  ある。                                                                      最大の難関は、再処理の過程で出る高レベル廃液を溶かしたガラスと混ぜ、 容器に封じ込める工程だ。フランスで既に確立した技術を使う手もあるが、  国産技術に固執するあまり、再処理工場全体の完成を遅らせている。                                          さらにこの「核のゴミ」をどう処分するかという問題がある。高レベル廃  棄物は1000年近く地中深く安全に管理しなければならないが、その処分  地が決まらない。2007年に高知県東洋町が名乗りを上げたが、推進派の  町長が選挙に敗れて白紙撤回した。                                                         原子力行政に詳しい政策研究大学院大学の八田達夫学長は、「再処理の論  理は完全に破綻している」と喝破する。電気事業連合会は2004年、再処  理工場のコストを19兆円と試算した。これは今も原発のコストが安いとい  う主張の根拠だが、使用済み燃料の半分しか処理しないのが前提。すべて処  理すると43兆円に膨らむと国の原子力委員会も認めた。残りを処理する第  2工場の是非は今年、議論が始まる。                                                        この論争は今に始まったことではない。2004年春には核燃料サイクル  の旗振り役であるはずの経済産業省内部から、鬼気迫る異論が噴出していた。




[scene3.東京]

                   

よみがえる怪文書

                                                        声を上げたのは6人の若手官僚だった。「19兆円の請求書−止まらない  核燃料サイクル」という怪文書をばらまき、核燃料サイクルを停止すべきか  否かで大論争を巻き起こした。                                                           25ページに及ぶ怪文書は核燃料サイクルの見直しを迫った。特に問題視  したのは「再処理コストは総額19兆円というが、工場の建設コストが当初  の3倍に膨らんだ前例を見れば、50兆円を超える可能性がある」という点  だ。                                                                       しかし、彼らの思いは道半ばで潰えた。原発推進で握る自民党と電力業界  の岩盤は厚かった。もはや彼らはエネルギー政策の中枢にはいない。それ以  来、政権交代があろうとも、原発政策の軸は微動だにしていない。                                           今も猪突猛進する経産省と電力業界。経緯を熟知する元経産省幹部は「原  発政策は思考停止に陥っている。見直しは絶えず必要なのに・・・」と嘆く。                                      思考停止はほかにもある。電源に占める原発の比率が約80%と高く、核  燃料サイクルを積極的に推進する原子力大国フランス。現地取材を進めると、 日本での評価と異なり、様々な問題を抱え苦悩する姿が浮かんできた。   



(次ページにつづく)