[scene1.九州]
核燃料サイクルの扉が開く
福岡市中央区。九州電力の本社で、眞部利應社長は安堵の表情を浮かべた。
電力業界の期待を一身に背負った大仕事をなし遂げたからだ。「安全運転の
実績をしっかり積みたい」。
2009年12月2日、九電は佐賀県の玄海原子力発電所3号機で日本初
のプルサーマルの営業運転を始めた。プルサーマルとは使用済み核燃料を再
処理してプルトニウムを取り出して作るMOX(ウラン・プルトニウム混合
酸化物)燃料で発電することを指す。
「MOX燃料は若干高いが、ウラン資源を節約できる」(電気事業連合会
の森本宜久副会長)。国が進めるプルサーマルだが、データ改ざんやトラブ
ル隠しで揺れた関西電力や東京電力が相次ぎ計画を延期。九電に失敗は許さ
れなかった。2015年度までに全国の16〜18基でMOX燃料を活用す
る予定だ。
余勢を駆って電力業界は本命の計画を一気に進めようとしている。2月に
も高速増殖炉の原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の運転が再開する。も
んじゅは1995年のナトリウム漏れ事故以来、実に14年ぶりの試運転再
開だ。
高速増殖炉を実用化できれば、新たなウラン燃料を使わず、1000年で
も発電できるという夢の核燃料サイクルが完成する。だが計画通り2050
年に実現するかは不透明。プルサーマルはそれまでの“つなぎ”の位置づけ
だ。
核燃料サイクルへの扉が開くのかどうか。その意味で2010年は日本の
原子力政策にとって節目の年になる。
だが足元に目を凝らすと、入り口から課題は山積みだ。まずMOX燃料は
すべてフランスに依存している。なぜ遠く離れたフランスから燃料を運んで
こなければならないのか。その答えは青森県六ヶ所村にある。
|