提言1 脱・思考停止で核燃料サイクルを国際化
提言1は、民主党政権はいつまでも原子力関連政策を放置しないで、核燃料サ イクル関連の政策の見直しからとっかかったらどうか、という。
@青森県六ヶ所村で進めている使用済み燃料再処理工場の操業が大幅に遅れて いること、A高レベル放射性廃棄物最終処分場が未だに見つからないこと、加え てBプルトニウムの軍事転用が国際社会の懸念材料になっていることなどの理由 で、核燃料サイクル完結政策を止め、使用済み燃料のまま貯蔵する政策も一つの 選択肢として再度議論してはどうか、という考えがこの提言の根底にあるようだ。
@の再処理工場の操業が遅延していることは、我々も大いに関心をもって注視 している。使用済み燃料の再処理技術はそれほど難しい技術ではなく、核兵器を 保有している国は、あの北朝鮮を含めてマスターしているほどの技術なのである から、技術大国を自認する日本にできないはずがない。「石橋を叩いて渡る」と いう日本人特有の神経質な性格が、操業前テストに時間を取られているのだろう と思われる。
Aの廃棄物処理場の選定の件だが、「放射性物質」と「廃棄物」というダブル キーワードが候補地になった地元の住民の方々に恐怖感を与え、拒否反応を呼び 起こさせるのであろう。いくら財政が厳しい自治体とはいえ、補助金につられて 引き受けるという時代は過ぎたと思われる。
本当に国内で見つけようとするなら、道州制区分か都道府県ベースで原子力発 電所か廃棄物処分場のどちらかを引き受けなければならないとする法案「エネル ギー関連施設に関わる地方自治体の義務化法(案)」でも施行せねばならないだ ろう。それがだめなら放射性廃棄物処分・管理の委託業務を一つのビジネスとし て、広大な砂漠などを抱える外国に打診してみるのも一つの方法かも知れない。
Bの再処理して取りだしたプルトニウムの軍事転用懸念の問題だが、これはウ ラン濃縮も含め、核燃料サイクルの国際管理と提供のアイディアが適切であろう。 ただその国際管理の拠点をどこにもっていくか、といった難しい問題も直ぐには 合意に達するか疑問である。しかし、国連の安保常任理事国だけが核兵器を保持 している時代はもう過ぎたから、核燃料国際管理の計画は遅きに期した感はする。
核兵器など所持しても使えないのだから何の価値もないと思われるが、所持し ている国や所持したいと思っている国がずいぶん増えたから、核拡散に神経をと がらしている人や国は少なくないようだ。核兵器廃絶や核拡散については真剣に 取り組まねばならない。
しかし、核拡散を懸念するあまり、原子力の平和利用の足かせになってはなら ない。また、地球温暖化を阻止するためにも原発は不可欠で、今後ますます増え るだろうから、地球資源のウランにのみ頼っていては直ぐに枯渇してしまうこと を考えると、使用済み燃料を再処理してプルトニウムを取りだし、燃料として利 用する体勢も、高速増殖炉の実用化も含め、できるだけ早く確立しておかなけれ ばならないだろう。
提言2 炭素税を導入し、市場の判断に任せよ
火力発電やガソリンエンジンで走る車などCO2を排出するものに炭素税を課 することは仕方がないが、だからといって火力、水力、原子力などで発電された 電気を消費者が自由に選ぶことなく、電力会社から送られてくる請求書で支払わ されている現状では、「市場の判断」などどうしてできようか?
「エネルギー源のベストミックスは政府ではなく、純粋な市場メカニズムに 基づいて決定される仕組みを考えてみてはどうか。そうすれば、使用済み燃 料の再処理工場稼働の是非もおのずと決まってくる」
ここでいうエネルギー源、つまり発電源のベストミックスを政府でも電力会社 でもなく「純粋に市場」つまり我々消費者に選ばせてくれる仕組みをつくること は、大いに賛成である。
我々がレストランで食事をする時、メニューを見て選ぶように、電気のメニュ ーをまず電力会社から提示してもらうというのはどうだろう。つまり、水力発電 からの電気、石油火力、石炭火力、原発からの電気、太陽光、風力発電からの電 気をリストアップし、それぞれの発電コストや送電コストに基づく電気代を列挙 した「電気メニュー」をである。
もちろん火力の電気には炭素税も加味されるだろうし、原発の電気には廃棄物 処理費用や解体費用なども加算される。太陽光や風力の電気には、政府や自治体 からの補助があれば、その分割り引かれるだろう。
消費者である我々はその電気メニューを見て、家族会議でもして「今年は太陽 光発電の電気100%でお願いします」というように電力会社に発注する。数種 類の電気を混合した我が家のベストミックで注文もできる。もし選択ができない なら、「調理長お任せ料理」よろしく「電力会社お任せ電気」で注文しても良い。
電力会社は注文伝票を総計して、現状の電源分布と照らし合わせ、もしその間 にギャップがあれば、電源開発計画の練り直しが必要になるだろう。そして「電 気メニュー」も1年に1度くらいは改訂が必要になるだろうから、それに基づき 注文の変更もしなければならない。
こういったやり方こそが「純粋な市場メカニズムに基づいて決定される仕組み」 といえるのである。炭素税を課税された火力の電気や無理矢理高額で買わされた 太陽光発電の電気を勝手に混合して値上げした電気代を請求される仕組みは「純 粋な市場メカニズム」とはとうていいえないのである。
提言3 「安全」「環境」の技術、海外展望の武器に
日本の原子力産業を輸出産業にまで成長させるには、諸外国、とくにはじめて 原発の導入を考えている国に対して、売り込みに猛チャージをかけねばならない。 そのための武器として、日本の安全と環境の技術をパッケージにして売り込めば よいと提言しているのだ。
「日本の原発の強みは、その安全技術と運転ノウハウである。新潟県中越沖 地震で証明した耐震技術は世界から称賛された。計画外停止の頻度は世界で 最も少ない水準だ。原発の初稼働から40年弱、大規模事故を起こさないよ う、厳しい安全基準をクリアし続けてきた蓄積が競争力につながる」
安全技術など不要という国はないだろう。日本はどこよりも厳しく、ときには 過剰なくらい安全性が要求されてきた。その貴重なノウハウを海外への売り込み に利用しない手はない。これは日本の大きな強みである。すでに海外からの原子 力技術者の養成を引き受けている。
「さらに日本の強みを打ち出せる方策がある。原発技術に限らず、太陽光発 電や風力発電など、ほかの自然エネルギー技術も一緒に提案することだ」
もう一つの日本の強みは、省エネや自然エネルギーの利用技術である。日本の 原子力発電プラントメーカーである日立、東芝、三菱重工は、原子力に限らず、 総合電気機器メーカーである。原子力発電プラントと一緒に自然エネルギー発電 装置や送電システムなどもパッケージにして売り込むことができる。はじめて原 発を導入しようとする国は、それらの技術の導入も希望しているからである。
海外に原発を売り込む時には、安全と環境の技術もパッケージにして売り込む ことは日本の強みと覚えよ、と日経ビジネスは提言しているのである。
そして、日経ビジネスの特集は、次のパラグラフで締めくくっている。
「ぜひ、3つの提言を原子力政策を再考する議論の材料にしてほしい。現行 政策は金科玉条ではない。状況変化に応じ、絶えず評価し直してこそ、真の ベストミックスを追求できる」
この3つの提言に加え、我々の「電気メニュー」提言も是非検討して頂きたい。
「G研」代表