【同感できるG情報】


日経ビジネス(2010年1月18日)


<特集>


   原発漂流


        民主が抱えるもう一つの「普天間」


(その3/12)


[<企業編>G研のコメント]


 日立、東芝、三菱重工の日本を代表する三企業が、原子力事業を展開して久し い。世界には、アメリカのゼネラル・エレクトリック(GE)とウエスティング ハウス(WH)、それにフランスのアレバが原子力発電プラントメーカーとして 残っていた。そこに最近、韓国の企業グループが加わってきたのである。

 世界の原子力事業は、上記の企業をベースとして、買収、提携、合併などが行 われ、その様態に様変わりが見られるのである。詳細はこの日経ビジネスの特集 「原発漂流」の「企業編」を見てもらいたいが、その概要をまとめておこう。

 日本の東芝がアメリカのウエスティングハウスの原子力事業部門を完全に買収 して一大コンツェルンを形成しつつある。日立はBWRグループとしてライセン ス関係にあったGEと提携して、日米それぞれに出資会社を設立し、役割分担し ながら世界に営業を展開しつつある。WHと長年PWRグループのライセンス関 係にあった三菱重工は、WHの買収劇に失敗したあと、フランスのアレバと緊密 なビジネス関係を結ぼうとしている。

 世界の原子力ビジネスに大統領をトップセールスマンにして出てきた韓国の企 業グループは、アラブ首長国連邦(UAE)から原発4基の受注に成功したが、 すべてを韓国内で賄うことができないため、東芝傘下のWHがバックアップする という。また、チェルノブイリ原発事故を起こし、事業が低迷していた旧ソ連の 企業もまた、WHの培ってきたパイプを通して東芝と提携を結ぼうとしている。

 やはりWHを傘下におさめた東芝が、世界の原子力ビジネスで一歩先を歩み出 した感は歪めないようである。

 この「企業編」の中で、各企業のリーダー達の言葉や日経ビジネスの担当者の 感じたことで特記すべきセンテンスがいくつかある。それを抜き出して列記して おこう。

 「東芝が乾坤一擲の勝負をかけていなければ、どうなったか。パイが想定よ り伸びなければ、そのまま縮小均衡に陥っていたに違いない。リスクと真正 面から向き合ったからこそ、その見返りとしてウエスチングハウスの国際ネ ットワークを享受できたのである」                   

 東芝は2006年、約6400億円という破格の一番札でWHを落札したのだ が、当時は「東芝は無茶をした」という批判が大勢を占めていた。ところが「リ スクと真正面から向き合ったからこそ、その見返りとしてWHの国際ネットワー クを享受できた」といえるという。WHが持っていた国際ネットワークは、東芝 の経営陣の期待以上といわれる。他の企業は羨ましい限りであろう。

 「産官一体となったアレバの戦略は原子力政策と不可分であり、グローバル 展開していると言っても、その姿は生粋の仏企業だ。むしろ東芝・ウエスチ ングハウス連合は融通無碍に打つ手を選び、世界的に自陣の網を広げて、よ り確実に果実を得られる−−」                     

 東芝が日本の国営企業であったら、日本の原子力政策に縛られ、国際ビジネス さえ自由に展開できなかったであろう。フランスのアレバは、名実共にフランス の官営企業だ。それに引き換え東芝−WH連合は、仏大統領自らがトップセール スをしてくれるような国の援助など期待できないけれども、自由にネットワーク を世界に広げ、確実に利益を得ることができる、といいたいのであろう。

 「佐々木社長は『国際的なネットワークを構築することで、世界各国の不確 定要素を克服できる』と強調する。国の政策の枠を飛び越えた臨機応変の体 制を築かなければ、不確実性の高い原発ビジネスを勝ち抜けないとの危機感 があるのだろう」                           

 特定の国に原発を売り込む戦術で満足しているようでは、原子力の国際ビジネ スに勝ち残ることはできない。それには国の原子力政策の枠に縛られることなく、 国際社会に飛び出さねばならない。これは東芝の社長の強い信念であるようだ。

 「無論、国の強力な支援があるに越したことはない。だが、日本企業はそれ が十分に見込めないことを見越して動かざるを得ない」          

 日本政府などまったく当てにならない。また、当てにしているようでは、この 世知辛い国際原子力ビジネスに勝ち残っていけない、といいたいのであろうが、 それにしても、日本政府のふがいなさを如実に指摘した言葉であることか。

 「また、産官複合体で燃料から廃棄物処理までの一貫体制を持つことが、原 発ビジネスで有利に働くことは間違いない。しかし、その仕組みを築けない 日本企業は国際的なネットワークに活路を見いだすしかない」       

 地元自治体への説得しかり、放射性廃棄物の処理しかり、安全許認可の信頼性 しかり、諸外国への売り込みしかり・・・、国は原子力政策を打ち出すだけで、 その実施には何も役割分担を担おうともしていない。そのような日本国政府に何 かを期待して待っているようでは、事業の進展は見られない。国内に見切りを付 けて、「国際的なネットワークに活路を見出す」しかない。正論であろう。

 「日本政府が原子力政策で袋小路に迷い込んでいく前に、日本の原発メーカ ーは大胆に国を飛び越えたビジネスモデルを築かねばならない。勝った負け たの『ゼロサムゲーム』ではなく、世界中の案件からきめ細かく実利を吸い 上げる『ノンゼロサムゲーム』を勝ち抜くのが持続的な成長の条件である」 

 世界の原子力産業が氷河時代に突入している間、世界の原発企業は次々に撤退 した。そのなかにあって世界では五社が生き残り、そのうち三社が日本の企業だ ったのである。その日本の三社は、成長させてもらった日本国内に止まっていて は、この先、前途多難であるという。日経ビジネスは「大胆に国を飛び越えたビ ジネスモデルを築かねばならない」と、これまた大胆に示唆している。

 地球温暖化の救世主として、石油に替わるエネルギーのエースとして、原子力 の需要は急増しつつある世界に飛び出せば、日本の原子力企業は確実に大きく成 長するであろう。

 しかし、そうなれば、日本国内の地球温暖化対策も電源開発はどうなるのだろ う、と新たな心配が浮上してくるのである。

(次ページにつづく)