「薄型テレビを品定めしていた東京都在住の会社員、佐藤貴文さん(39)
は「ポイントの魅力が大きいうえ、電気代が節約でき、地球温暖化防止にも
役立てるなら一石三烏≠ナすね」と話してくれた」
この佐藤さんの考えはほとんどの人の本音であろう。何故省エネタイプの薄型 テレビに買い換えようとしているのか?@エコポイントがもらえ、割安感がある、 A省エネタイプだから電気代が節約できそう、B地球温暖防止にも役立ちそう、 という理由が列挙されている。3つのうち2つまでが消費者個人にとって得をす る。3番目の理由で、ようやく地球温暖化防止を上げているのである。
自分の行動が、温暖化防止に役立たないよりいくらかでも役立つ方が、多少な りとも公徳心がくすぐられるから良いとしているが、それに重きをおいたモチベ ーションとはとうていいえない。
「『うちエコ診断』参加世帯のCO2排出量平均値の内訳を見ると、マイカ
ーが33%で最も多く、ついで給湯が20%、暖房が13%の順だった。一
方、各家庭が意識して省エネ努力をすることが多い冷房はわずか2%。テレ
ビも2%、照明が3%で、全体に占める比率はわずか。仮にテレビの消費電
力が半分になったとしても、CO2排出量は1%しか減らない計算だ」
「アンケート調査では『そんなに排出量が多いとは思わなかった』分野とし
てマイカーを挙げた家庭が42%、給湯を挙げたのは22%あった。1つで
も挙げた家庭は全体の75%に達した。『自分の家の弱点を把握できれば、
効果的な対策を打てるはずです』。たとえば給湯では、家族が続けて風呂に
入れば追いだきに使うエネルギーを大幅に減らせる。シャワーヘッドを節水
タイプに交換するのも効果的だ」
CO2の排出量が実際に多いのは、@マイカー、A給湯、B暖房となり、各家 庭が省エネ努力はしているが、その割にCO2の排出量がそれほど多くないもの は、C冷房、Dテレビ、E照明だという。つまり@ABの主なエネルギー源は石 油やガスであり、CDEのそれは電気だからである。
電気を節約すれば、電気代は安くなるが、CO2排出量削減にはあまり効果は ないのである。それは、CO2を出さない原発と水力発電の電力が50%以上を 占めていたり、石油や石炭、LNGを燃料とする火力発電のCO2排出量を減ら す技術が進んできたからである。
一方の石油やガスを燃料としているマイカーや給湯、暖房機は、それらの利用 や設置場所で酸素を取り込んで燃焼させるため、CO2という排気ガスをどうし ても排出することになるのである。「そんなに排出量が多いとは思わなかった」 と勘違いしている人があまりにも多いことにただただ驚かされるのである。
「国勢調査によると、05年の日本の総世帯数は4906万世帯で、85年 に比べて29%増加した。核家族化が進み1世帯あたりの人数が減ったため で、特に単身世帯は05年に1446万世帯と85年から83%も増えてい る。全世帯に占める単身世帯の比率は、同じ期間に20.8%か29.4% まで上昇した。結婚しない人が多くなったうえ、独居老人が増えたこともあ る」
第二次大戦後、日本の伝統的な家制度は、アメリカの占領政策の一貫として廃 止されたが、それによる弊害が様々なところで生じていると我々は考える。エネ ルギー分野における弊害もその一つといえよう。つまり核家族化に見られるよう に家族の極小化は、家庭によるエネルギー消費量の増大は当然の結果だからであ る。
親子3人家族のA家の息子と同3人家族のB家の娘が結婚する場合、A家に嫁 入りするのでも、B家に婿入りするのでもなく、新たな独立した家を持つことが 今や当たり前になっているが、元あった2世帯から新たに1世帯が誕生したこと になり、合計3世帯になったことになる。
これら3世帯は、たまには一緒に食事をすることもあろうが、普段は3世帯別 々に家事をし、お風呂を沸かし、車も増えるかも知れない。そうなると、親子2 世帯の核家族化自体、エネルギーの消費が増えることになり、当然ながらCO2 の排出量も増えることになる。
「1世帯に親子4人で住んでいた家族から、子ども2人が独立して一人暮ら しを始めると3世帯になり、それぞれの世帯で家電製品や給湯器を使う。1 人当たりのエネルギー消費量は増える。『アンケート調査を基にした私の研 究では、単身世帯のエネルギー消費量は4人世帯の1人当たり消費量の1. 5倍もあると推計しています』」
一人暮らしをすると、4人家族で暮らしていた時の一人当たりのエネルギー消 費量の1.5倍になるという。つまり別のいい方をすると、4人が別々に暮らし 始めると、4人が一緒に暮らしていた時と同じエネルギー消費量ではなく、2人 増えた6人が一緒に暮らした時と同じくらいの消費量になるというのだ。
1人より2人、2人より3人、大勢で一緒に暮らすこと、それだけで省エネに なり、ひいてはCO2排出量の削減に繋がるというのだ。
家庭からも排出量削減を相当量期待したいなら、大家族優遇策くらいのことを 考えるべきであろう。3世帯以上同居の大家族のメリットは、省エネやCO2削 減に繋がるばかりではない。祖父母が孫の育児や躾に貢献し、保育所がなくとも 若い母親は安心して外に働きに出ることができる。また、祖父母が後期高齢者に なって介護が必要になった時も家族みんなで協力して祖父母の面倒が看られるか ら、公的な養老施設など高齢者福祉も不要になる。
戦前までに日本は、ほとんどの家庭は大家族で、互いに協力して暮らしていた から、保育所や老人ホームなどほとんど不要だった。舅姑らが孫はまだかと催促 して、誕生してからは育児を助けてくれるから、息子夫婦も安心して出産ができ たのではないだろうか。少子化は、かかりすぎる育児費用が賄いきれないからで はなく、子供時代、一人っ子で育ってきた子供が大人になって結婚しても、核家 族では姑などの助けも得られない若い夫婦では、はじめての育児をすることに自 信がないからではないだろうか。
また、若い夫婦が出産、育児に躊躇するのは、生活が金銭的に苦しいからばか りではない。団塊の世代が生まれた昭和22年(1947年)は、今よりもっと 不景気で、日本人の暮らしはどん底だった。それでも当時の若い夫婦は、いま苦 しくとも、老後にはこの子達が面倒見てくれるだろうと、大きな夢を抱いて子供 をつくったのである。「貧乏人の子だくさん」という言葉があったことを、少子 化対策を考えている人たちはご存じないのだろうか。
このようにいまの少子化対策や高齢者福祉策は大きな間違いを犯してきたよう に、地球温暖化対策も間違いを犯そうとしているように思えてならない。CO2 排出量大幅削減に国民の協力を仰がなければならないとするなら、家制度など、 戦後レジームの抜本的な見直しから取り組まなければならないだろう。
「G研」代表