日本経済新聞(2010年1月24日)


<国際欄記事>


  韓国、原発受注へ官民一体


        研究開発に補助■大統領がセールス


(その3)


   <本文転載>

 【ソウル=尾島島雄】韓国が官民一体で海外での原子力発電所の受注獲得 
に乗り出した。2030年までに原発80基の輸出を目指す国家戦略を策定。
信頼性向上のための研究開発費補助や李明博(イ・ミョンバク)大統領によ 
るトップセールスで全面支援する。韓国企業連合は昨年末、アラブ首長国連 
邦(UAE)アブダビ首長国で海外初の原発一貫建設を受注、ヨルダンやト 
ルコなどでも受注を目指している。造船や液晶パネルなどに続き、原発分野 
でも日本勢との競合が激しくなりそうだ。                




 ◆30年までに80基目標

                                                       韓国政府はこのほど「原子力発電輸出産業化戦略」を決定。今後、30年  までに世界で発注される原発のうち、2割を獲得する目標を掲げた。日米仏  の一角に食い込み、世界3位を目指す。                                                       競争力向上へ研究開発も支援。原子炉の耐久性改善などのため11〜17  年に4000億ウォン(約310億円)の研究開発費が必要と想定。その4  〜5割を政府が補助する。                                                             日米仏との受注競争となったUAEの案件では、昨年末に李大統領がUA  Eを訪問。受注と引き換えに産業分野での幅広い協力を約束した。李大統領  は「米仏日ロシアと(原子力事業で)肩を並べた」としており、自ら売り込  みに動く姿勢だ。                                                                 韓国は1978年に設備輸入により国内での原発営業運転を開始。これま  でに20基の原子炉が稼働している。斗山重工業が段階的に技術を習得し、  95年以降は国産原子炉も運転。中核機器の蒸気発生器では既に世界商戦の  有力プレーヤーだ。                                                                今月10日には韓国原子力研究院と大字建設が中東のヨルダンで研究用原  子炉を約2000億ウォンで落札した。同国が検討する商業用原子炉の受注  につなげたい考え。トルコが黒海沿岸に設置する原発の受注に向けても政府  や韓国電力公社が働きかけを強めている。                                                      韓国電力など公企業5社は原子力事業の強化へ11年までに約2800人  を新規雇用する。釜山市では韓国電力が原子力技術を専門に扱う大学院を1  1年9月に開校。関係者は「アジアや中東、北アフリカから多く学生をとり  たい」としており、将来の受注活動を有利に進める狙いがある。      




 ◆政府・電力・メーカー

                                                      

    日本勢、連携に課題

                                                        韓国がUAEアブダビ首長国の原子力発電所を受注し、原子力産業の海外  進出を急ぐ日本の強力なライバルに浮上した。新興国での原発商戦は、企業  の実力だけでなく、政府の強力な支援が受注の決め手になる。日本連合は体  制を立て直す必要がある。                                                             韓国は大統領の権限が強く、大統領の指示一つで挙国一致体制ができあが  る。UAEでの受注競争では、フランスもサルコジ大統領が頻繁にアブダビ  入りし、仏アレバの受注を後押しするため軍事協力も含めた政府の全面支援  体制を強調した。                                                                 一方の日本は、政府と電力会社、メーカーの利害が複雑に絡む「三すくみ」 の構造だ。メーカーも三菱重工業、日立製作所、東芝と有力企業がそろうが、 互いにライバル意識が強く、「オールジャパン」として足並みがそろいにく  い。経済産業省は日立製作所・米ゼネラル・エレクトリック連合の受注に向  けて奔走したが、強力なトップセールスを展開する韓国やフランスに比べた  迫力不足は歴然だった。                                                              韓国は価格面などで破格の条件を提示したとされる。大型工事は工期が遅  れると費用が膨らみ、巨額損失を抱えるリスクがある。安値受注すればその  危険がさらに高まるだけに、深追いしなかった日本連合の判断は賢明だった  との見方もある。