日本経済新聞(2010年1月24日)


<国際欄記事>


  韓国、原発受注へ官民一体


        研究開発に補助■大統領がセールス


(その2)


 「日米仏との受注競争となったUAEの案件では、昨年末に李大統領がUA Eを訪問。受注と引き換えに産業分野での幅広い協力を約束した。李大統領 は『米仏日ロシアと(原子力事業で)肩を並べた』としており、自ら売り込 みに動く姿勢だ」                           

 国のトップが原発のセールスマンになるケースはいままでフランスのサルコジ 大統領や米国のブッシュ前大統領が有名であったが、韓国の李大統領も昨年、セ ールスマンとして名乗りを上げていたことになる。

 国家の象徴という立場の天皇にセールスをしていただくわけにはいかないが、 せめて首相が原発建設を計画している国を訪問する時、「日本の原発は優秀です から是非検討に加えてください」といった発言があってもいいはずだが、未だか つてそういう話は、残念ながら聞いたことがない。

 「韓国は1978年に設備輸入により国内での原発営業運転を開始。これま でに20基の原子炉が稼働している。斗山重工業が段階的に技術を習得し、 95年以降は国産原子炉も運転。中核機器の蒸気発生器では既に世界商戦の 有力プレーヤーだ」                          

 韓国最初の原発、古里1号が営業運転を開始したのは1978年4月29日だ が、臨界に達したのは1977年6月19日である。最初は、日本と同じように、 アメリカやフランスのメーカーに建設を全面的に発注していたが、徐々に国内企 業が力を付け、国産原子炉も造っていたのである。

 「韓国電力など公企業5社は原子力事業の強化へ11年までに約2800人 を新規雇用する。釜山市では韓国電力が原子力技術を専門に扱う大学院を1 1年9月に開校。関係者は「アジアや中東、北アフリカから多く学生をとり たい」としており、将来の受注活動を有利に進める狙いがある」      

 原子力工学の大学院を開校するということは、リーダーの養成の必要性からで、 その上途上国からの留学生を数多く受け入れるということは、留学生が卒業して 帰国した暁にその国との商取引を有利に進める狙いだという。実に合理的な計画 といわざるを得ない。

 国内の立地で地元との交渉で未だに汲々している日本とは、段違いの格差があ るといわざるを得ない。そして、「原子力工学科」という名称では優秀な学生が 集まらないとして、「システム工学科」などといった科名変更を行ってきた日本 の大学と比較した場合、どちらが先輩格か分からないくらいである。

 「韓国は大統領の権限が強く、大統領の指示一つで挙国一致体制ができあが る。UAEでの受注競争では、フランスもサルコジ大統領が頻繁にアブダビ 入りし、仏アレバの受注を後押しするため軍事協力も含めた政府の全面支援 体制を強調した」                           

 国民が選んだ大統領なら原発プラントの売り込みもできるが、国会で選ばれた 議院内閣制の総理大臣ならできないという論理は通らない。重要なことは、国の トップになるような人物なら、原発の安全性や必要性に関する知識を十分持ち合 わせており、信念として諸外国のトップと堂々と渡り合えるかである。ましてや 日本の現総理は、東京大学の理科系学部を卒業したはずである。

 「一方の日本は、政府と電力会社、メーカーの利害が複雑に絡む『三すくみ』 の構造だ。メーカーも三菱重工業、日立製作所、東芝と有力企業がそろうが、 互いにライバル意識が強く、『オールジャパン』として足並みがそろいにく い。経済産業省は日立製作所・米ゼネラル・エレクトリック連合の受注に向 けて奔走したが、強力なトップセールスを展開する韓国やフランスに比べた 迫力不足は歴然だった」                        

 「政府と電力会社、メーカーの利害」とは何か、よく理解できないが、国内で それぞれの利害などを絡めている時ではないだろう。また、日本国内に原子炉メ ーカーが三社は多すぎるといった考えもあるようだが、技術立国日本に三社くら いあっても決して多いとは思わない。自動車メーカーなど三社以上あるではない か。要は日本の原子力政策が国内向けに限定してきたということで、輸出産業ま で発展させる考えが政官には最近までなかったということだ。

 これらメーカー三社を統合して「オールジャパン」として足並みを揃える必要 性など毛頭ない。今まで通り、三社が切磋琢磨して腕を磨き、海外に進出してい けばよい。三社にはそれだけの力がすでに備わっているといえよう。

 「経済産業省は日立製作所・米ゼネラル・エレクトリック連合の受注に向けて 奔走した」そうだが、事務次官では役不足だし、大臣を動かしたとしても、短期 間で交代してあまり勉強する時間もない大臣では、相手は聞く耳を持たなかった だろうと想像できる。やはり国の総理が堂々と交渉するところに意義があり、説 得力も出てこようというものだ。

 しかし、原発反対を党是としている政党を政権与党に取り込んでいる状態が続 く限り、韓国の動きに指をくわえて眺めているより仕方がないだろう。

               「G研」代表

(次ページにつづく)