朝日新聞(2010年1月20日)夕刊


<IAEA基準案>


   原発耐震 日本に学べ


(その2)



 国際原子力機関(IAEA)は、日本の耐震指針の内容を採り入れた新た 
な耐震基準案と、地震で被災した原発を復旧させる行動計画をまとめた。2 
007年の新潟県中越沖地震で被災した東京電力柏崎刈羽原発での教訓が反 
映され、地震国日本の原発の耐震設計が「世界標準」として盛り込まれた。 
世界各地で原発建設が加速する中、加盟国の耐震基準作りや改定のひな型に 
なる。                          (坪谷英紀)





  設計、世界標準に

                                                               新基準は2月にも発表される。改定にあたり、経済産業省原子力安全・保  安院は柏崎刈羽原発の経験を盛り込むべきだと提案。08年から3年間、毎  年7千万円の資金をIAEAに提供し、東京大や原子力安全基盤機構などの  専門家も改定作業に参加した。                                                           新基準では、06年に改定された日本の耐震指針の考え方が生かされた。  原発に影響を及ぼす地震動を評価する際は、原発の立地地域の活断層を調べ  る。その際に、震源を点とみなすだけでなく、震源域の広がりや断層破壊の  過程を考慮する新たな手法が採り入れられた。                                                    中越沖地震では、柏崎刈羽原発が設計段階での想定を超える揺れに見舞わ  れ、従来の手法の限界が露呈。地震後に国内の電力各社が、既存の原発に実  施した再評価で、この考え方が採用された。                                                     IAEAは大地震に見舞われた原発の損傷をどう評価し、どのように運転  を再開させるかなど、復旧への行動計画に関する報告書も今回、新たにつく  った。                                                                      IAEAの耐震基準は今後原発を新設する国が耐震基準をつくる際や、原  発をもつ国が耐震基準を見直す際の参考になる。各国の耐震基準が世界標準  を満たしているか、IAEAが審査するときにも活用される。02年に出さ  れた基準を改定した。                                                               世界では現在、中国やインドネシア、ベトナムなどのアジア諸国、アラブ  首長国連邦などの中東諸国のほか米国などでも、原発の新設や増設を相次い  で計画。東芝、三菱重工、日立GEニュークリア・エナジー、仏アレバの各  原発メーカーが激しい受注競争を繰り広げている。日本の耐震設計の手法が  世界標準になれば、国内企業が海外で工事を受注しやすくなる。                                            IAEA国際耐震安全センターの森田深(しん)・上席安全担当官は「先  進的な耐震の取り組みが世界標準として盛り込まれたことは、世界の原発の  安全の向上につながる。日本は今後、アジア諸国の耐震基準づくりにも協力  していくべきだ」と話す。