電源や情報機器代わりに
銀色の流線形ボディーに前後4つずつ、計8つの小さい車輪 −−。清水
浩・慶大教授が試作した電気自動車(EV)「エリーカ」は800馬力、最
高時速370キロメートルのスポーツカータイプで、街中で短距離を移動す
るというEVのイメージをくつがえす。
清水教授の運転に試乗させてもらうと、途切れることのない加速で、助手
席に体が吸い込まれるような錯覚を受けた。清水教授は「ワクワクするでし
ょう。EVの潜在能力に誰もが驚き、納得する」と誇らしげに話す。
エリーカの最大の特徴は、すべての車輪の中にモーターを設置し、動力を
車輪に直接伝える独自技術だ。モーターと車輪の位置が離れている従来のE
Vと比べて加速性能が飛躍的に向上し、1回の充電で走れる距離が約2倍と
なる。通常はモーターがある床下部分に電池を置けるため、車内も広くとれ
る。
この独自技術を売り込むため、清水教授らは昨年8月、ベンチャー企業
「シムドライブ」を設立した。車を生産するのでなく、技術を他社に提供し、
技術移転料や特許権などの使用料を得るビジネスモデルだ。大企業を含む多
くの企業から照会があるといい、事業化につながる試作車を年内に他社と共
同開発する。
ガソリン車の場合、約3万点の部品を組み合わせるため、生産は鋳造や組
み立ての高度なノウハウを持つ大手自動車メーカーに限られる。一方、EV
は部品数が1万点程度で済むとされ、モーターや電池などの中核技術がその
まま車の性能を左右するため、他業種やベンチャーが参入しやすくなる。
クライスラーやゼネラル・モーターズ(GM)など自動車大手が相次いで
経営破綻(はたん)した米国では、グーグルの共同創業者も出資した「テス
ラ・モーターズ」が高性能EVの量産を始めた。中国では、電池メーカーだ
った「BYD」が現地の自動車メーカーを買収し、EV生産に乗り出した。
日本ではまだ、本格的なEVベンチャーは見られないが、清水教授は「E
Vが普及することで様々なメーカーが参入し、自動車業界の勢力図が変わる
可能性もある」と指摘する。
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