日本経済新聞(2009年11月2日)

<社 説>

[25%削減 いかに実現 B]

        低炭素の要の原発に正面から向き合え


(その3)


 「特に最終処分場選びは、名乗りを上げる自治体がなく、見通しが立たない。 政治主導で候補地を選び、地元に受け入れを働きかけるなど、国の積極的な 関与が欠かせない」                          

 高レベル放射性廃棄物の最終処分場を引き受ければ多額の補助金や補償金がも らえるる。それにはどの自治体も喉から手が出るほどほしい。しかし、住民から 「自分たちの命の引き換えに処分場を引き受けるのか」と詰問されれば、自治体 の長も議員も引かざるを得ないだろう。「札束で頬をはる」という旧態依然の方 式では最終処分場はおろか新規の原発立地さえも見つからないだろう。

 ではどうするか? 都道府県単位で、原発か処分場かいずれかを引き受けなけ ればならない制度を設けるのである。そのどちらも引き受けられない都道府県の 電気料金は倍額支払うというようにする。原発が引き受けられない東京都でも、 例えば日比谷公園の地下に最終処分場の建設は、十分可能だ。もちろん安全性は 未来永劫にわたって確保される。

 これくらいの方法を採用しないと、20世紀に発見された人類最高の技術を有 効に活用することはできないだろう。

 「併せて電力自由化を改めて論議しなければならない。自然エネルギーを大 量に受け入れると、もともと割高な電気料金が跳ね上がる。それを抑えるに は競争原理が必要だ」                         

 このパラグラフに書かれた日経の主張には賛同しかねる。電力を自由化して、 できるだけ多くの企業に参加してもらいたいなら、競争原理などを導入すれば、 ますます参加企業は少なくなるはずだ。既存の電力会社が何故有利かは、発電か ら送電、売電まで一社で展開できるからである。その上、潤沢な資金でイニシア ルコストのかかる原発の建設ができ、発電コストの安い電気を安定して供給でき るからである。

 既存の電力会社と無益な競争をするより、共存共栄を図らせた方が何倍も消費 者のためになり、新規参加企業にとってもより参加しやすくなるというものであ る。

 例えば、都市ガス会社が電力事業に参加しようと思えば、都市ガスのために海 外で開発して余剰天然ガスで発電に使うことができれば、また、余剰天然ガスを そのまま電力へ売り渡すより、都市ガス会社が設置した火力発電所で発電した電 力を既存の電力会社へ売り渡せば、それだけ付加価値を高めたことになって利益 を上げることができるというものだろう。

 また、製鉄会社が溶鉱炉の側に火力発電を設置して、溶鉱炉の余剰熱で発電し、 既存の電力会社へ売電することができる。

 電気事業に新規参入する企業が発電から送電、売電まで手がけるという、既存 の電力会社とことごとく競った事業を展開することは、新規参入者にとっては不 利になる。既存の電力会社に、特に送電などで便宜を図らせようとすれば、それ は本来の「自由化」の精神に反する。また無理に高額で買わせることにでもなれ ば、それだけ一般消費者への電気代に上乗せされて、消費者にとってより不利益 を被ることになる。

 「しかし新規参入企業が増えれば、競争を通じ自然エネルギーを効率よく取 り込む工夫を重ねる可能性が十分ある。それによって電気料金の上昇を抑制 する効果も期待される」                        

 天然ガス火力の都市ガス会社、余剰熱による火力の製鉄会社、小規模水力発電 の自治体水道局など、あるいは原子力発電システムの原子炉メーカーなどが新規 に電気事業に参入してくれそうな企業・団体といえよう。これらの企業なら、そ れぞれの利点を活用して、既存の電力会社より安く発電する可能性は大いにある だろう。しかし、潤沢に投資資金があるからといって電気事業に参入しようとし ても、まったく電気事業が素人なら、その企業にとってはいうに及ばず、協力さ せられる既存の電力会社は当然ながら、そして一般消費者にとっても何のメリッ トもないといえよう。

             「G研」代表

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