読売新聞(2009年11月6日)

<総合面>

  プルサーマル、初稼動===>玄海原発

          核燃サイクル やっと一歩


(その4)


 <本文転載>


 使用済み核燃料を再処理して使う、国内初のプルサーマル発電に向け、九 
州電力玄海原子力発電所3号機(佐賀県玄海町、出力118万キロワット) 
の原子炉が5日起動し、同日夜連鎖的に核分裂反応が起こる臨界に達した。 
国が推進する核燃料サイクルが、10年以上遅れて新たな一歩を踏み出した 
が、プルサーマルの定着までの道のりは険しい。             
  (東京科学部・山田聡、西部経済部・若松健一、西部社会部・中村明博)




      トラブル続き 10年遅れ

 ◆温暖化対策

                                                 「トラブルなどで延期の繰り返し。ようやくたどり着いた」。前原子力安  全委員長で、1960年代からプルサーマルの研究を行ってきた松浦祥次郎・ 原子力安全研究協会理事長(73)は、プルサーマル始動の日を待ち望んだ  原子力関係者の声を代弁した。                                                           プルサーマル発電は、資源の大半を輸入に頼る日本が進める、核燃料サイ  クル政策の柱だ。全国53基ある原発から出る使用済み核燃料は、年間約1  000トン。この中には燃え残りのウラン、新しく生成されたプルトニウム  がある。これらを回収して、MOX(ウラン・プルトニウム混合)燃料とし  て再利用する核燃料サイクルは、資源の有効利用、放射性廃棄物の減少など  につながると期待される。鳩山政権も地球温暖化対策として、二酸化炭素を  ほとんど出さない原発を重視し、プルサーマル発電推進の姿勢を打ち出して  いる。                                                                      国際的にも意義がある。既に国内には、使用済み燃料から再処理したプル  トニウムが約28トン(今年6月現在)存在する。日本は、軍事転用が可能  なプルトニウムを必要以上に持たないと国際公約しており、公約を守るため  にもサイクルの実現は不可欠だ。                                                        

 ◆地元と良好

                                                                  核燃料サイクルの方式は、プルサーマルによるものと、現在研究開発段階  にある高速増殖炉を使うものと2通りある。その一翼を担う高速増殖炉「も  んじゅ」が95年にナトリウム漏れ事故を起こして計画は頓挫。電力各社で  つくる電気事業連合会(電事連)は97年、2010年までに16〜18基  の原発でプルサーマル計画を導入する計画を公表した。しかし、99年、イ  ギリスから関西電力に運び込まれる予定のMOX燃料の検査データ捏造(ね  つぞう)が発覚、さらに02年には東京電力による原発トラブル隠しが明る  みになった。相次ぐ不祥事に、地元の理解が得られず、プルサーマル導入が  大幅に延期された。                                                                先行した東電や関電が脱落する中、原子力発電比率が約4割と高い九電が  一番手に浮上した。94年の原発稼働以来、トラブルの報告がなく、地元自  治体などとの関係も良好だったことも背景にある。            




  再処理、MOX工場延期 定着へ課題山積

                                                    プルサーマルは1960年代に欧州で始まり、フランス、ドイツ、米国な  ど9か国で導入され、08年末までに58基で実施された。ドイツでは約半  分の原発で導入され、フランスでは3割を超える。玄海原発3号機同様、既  設の軽水炉が利用されているが、燃料集合体に占めるMOX燃料の割合は、  日本の安全基準の3分の1を超え、4割近いものもある。今までのところト  ラブルは報告されていない。                                                            日本では、日本原子力発電の敦賀原発(福井県敦賀市)などでMOX燃料  計6体が試験的に使われた。「安全性は確認済み」(原子力安全委員会)と  いう。                                                                      ウラン燃料を使う軽水炉では、生成されたプルトニウムが燃焼している。  MOX燃料はプルトニウムが最初から含まれるが、発熱量や使用期間がウラ  ン燃料とほぼ同じになるよう作られている。昨年5月から建設が始まってい  る大間原発(青森県大間町)は、世界で初めてMOX燃料だけの使用を目指  しているが、経済産業省原子力安全・保安院は、通常の原子炉に比べ制御棒  の効きが悪い点などに配慮して設計され、問題ないという。                                              ただ、プルサーマルが定着するには課題は山積みだ。                                                サイクルの中核施設となる再処理工場(青森県六ヶ所村)は97年に稼働  するはずが、トラブルが重なり、17回も延期。来年10月の完工予定も見  通しは不透明だ。同工場近くに計画中のMOX燃料工場も従来より約2年遅  れの15年に完工時期が先送りされた。                                                       そのため、プルサーマルで使うMOX燃料は、英仏の燃料加工会社に加工  を委託しなくてはならない。国内で再処理する場合も、加工コストがかかる  ため、MOX燃料は割高になり、電気料金にはね返ると言われる。ただ、電  事連は「電気料金への影響はない」としている。高速増殖炉では、原型炉   「もんじゅ」は、来年3月までの再開を目指して作業が進められているが、  商業炉の実用化は2050年頃で先は長い。