朝日新聞(2009年10月29日)

<環境 エコロジー>

   環境省、アセスで「原発推進」

                  九電の川内で方針明示


(その3)


 <本文転載>


 原子力発電所の建設について、環境省が積極的な姿勢を打ち出した。九州 
電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の増設計画で、環境影響評価(環境ア 
セスメント)法に基づき、九電に「原発の最大限の活用を」と求める大臣意 
見を出した。環境アセスで「原発推進」を明記した大臣意見は初めてだ。背 
景に何があるのか。                   (横井林太郎)





  CO2対策 「最大限の活用を」

                                                        原発推進の大臣意見は、13年度の着工をめざしている川内原発3号機の  増設計画の環境アセスの手続きで出された。小沢鋭仁環境相が9月28日付  で、原発の許認可権を持つ直嶋正行経済産業相に提出した。                                              環境アセス法に基づく原発への環境相意見は8件目になるが、過去に原発  推進を打ち出したことはない。環境省が編集している今年の「環境白書」で  は「発電過程で二酸化炭素を排出しない原発については、今後も安全確保を  大前提に、一層の活用を図る」と記されている。しかし、エネルギー安定確  保の観点から推進の旗振り役となってきた経産省と違い、環境省が独自の権  限で積極姿勢をみせたことはこれまでなかった。                                                   今回の意見書で重視したのは、温室効果ガスの排出削減だ。「排出削減に  は、原発の着実な推進が必要」と示し、「わが国有数の温室効果ガス多量排  出事業者」とした九電に原発の活用を求めた。                                                    環境省の環境影響審査室の担当者は朝日新聞の取材に「原発推進は京都議  定書目標達成計画や『低炭素社会づくり行動計画』で政府方針として閣議決  定されており、従来の姿勢を変えたわけではない」と説明する。                                            しかし、原発増設を積極的に認める代わりに、老朽化した火力発電所の効  率化、とりわけ石炭火力の稼働を抑制して二酸化炭素(CO2)の削減を促  そうという狙いは明確だ。日本では温室効果ガス排出が90年以降、9%   (07年度)も増えた。価格が安いがCO2排出が多い石炭火力ヘの依存を  高めたことが理由の一つだ。                                                            環境省は今年に入り、発電所のアセス意見に温暖化対策の観点から指摘を  続けている。今年5月には、福島県いわき市に計画されている石炭火力発電  所の建設について「実行可能なCO2削減対策が講じられていると言えず、  温暖化対策上問題があり、計画については是認しがたい」との大臣意見を出  した。                                                                      今回の川内原発増設への意見書も同じ流れで、麻生前政権時から省内で検  討されていた。                                                                  社民党党首の福島瑞穂・消費者担当相は今回の意見書の内容に「(連立3  党協議で)自然エネルギー促進やCO2削減は合意したが、CO2削減のた  めに原発推進とは合意に至っていない」と反発するものの、小沢環境相は記  者会見で「原発の安全性を確保していかなければいけないと同時に、温暖化  対策として極めて有効な手段という両面を加味した」と述べた。                                            専門家の判断はわかれる。                                                            環境アセスメントを専門とする原科幸彦・東京工業大教授は「長期的な観  点から原発活用の是非に踏み込むのならば、放射能汚染や放射性廃棄物など  の問題も含めて総合的に取り上げるべきだが、今回は温暖化対策だけ、非常  に狭い範囲でとらえている」と疑問を投げかける。                                                  一方、環境法を専門とする浅野直人・福岡大教授は「環境アセスも、従来  型の地域的な公害や自然保護だけでなく、長期的な地球環境の観点も重要だ」 と一定の評価をしている。                       



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