(その2)
原子力発電の建設は、電力需要に見合った計画を立てるのが従来のやり方だが、
この電力需要は経済の低迷で伸び悩んでいるのが現状であろう。したがって最近
は、地球温暖化対策により原発の必要性が増しているのである。よって「環境省
が独自の権限で積極姿勢をみせた」のは当然の成り行きなのであって、驚くに値
しないといえよう。
「しかし、原発増設を積極的に認める代わりに、老朽化した火力発電所の効 率化、とりわけ石炭火力の稼働を抑制して二酸化炭素(CO2)の削減を促 そうという狙いは明確だ。日本では温室効果ガス排出が90年以降、9% (07年度)も増えた。価格が安いがCO2排出が多い石炭火力ヘの依存を 高めたことが理由の一つだ」
火力発電、とりわけ石炭火力発電をじょじょに減らしてその跡地に原発を、と できれば理想だが、天然ガス火力にでも置き換えられれば、二酸化炭素排出量の 低減の観点からよいとされている。たしかに石炭は、国内炭もまだいくらか採掘 できるが、コストの安い石炭が特にオーストラリアから輸入できたから、197 0年代のオイルショック以来、石炭火力を増やしてきたことだけは確かだ。
しかし、それが「温室効果ガス排出が90年以降、9%(07年度)も増えた」 理由ではない。主な原因は、家庭における家電製品、とくにエアコンの普及と、 ガソリン車の普及であって、石炭火力が主な原因ではない。石炭火力でないこと は、石炭火力を少々増やしたのは、京都議定書の基準年(1990年)以前、1 973年の第一次オイルショック以降の70年代、80年代だから、90年以降 に増えた温室効果ガス排出量に寄与している訳ではない。
「社民党党首の福島瑞穂・消費者担当相は今回の意見書の内容に『(連立3 党協議で)自然エネルギー促進やCO2削減は合意したが、CO2削減のた めに原発推進とは合意に至っていない』と反発するものの、小沢環境相は記 者会見で『原発の安全性を確保していかなければいけないと同時に、温暖化 対策として極めて有効な手段という両面を加味した』と述べた」
先の総選挙で政権を勝ち取った民主党は、参議院で過半数に達していないこと から社民党と国民新党とで連立を組まざるを得なかったのであろうが、とりわけ 原子力に批判的な社民党と組まざるを得ないことは頭の痛い問題だろう。
福島・社民党党首が主張するように、原発推進は合意に至っていないだろうが、 原発反対も合意に至っていない。ならば、民主党の小沢環境大臣が原発推進の政 策を打ち出し、それを閣議なり国会なりで、与党連立のしがらみを外して議論す る他ないだろう。よもや野党になったとはいえ、原発を進めてきた自民党が国会 議論で、よもや反対することはないだろう。したがって衆参両院で第一党の民主 党と第二党の自民党が賛成することは明らかなのだから、こと原子力政策に関し ては、何ら恐れることはない。
「環境アセスメントを専門とする原科幸彦・東京工業大教授は「長期的な観 点から原発活用の是非に踏み込むのならば、放射能汚染や放射性廃棄物など の問題も含めて総合的に取り上げるべきだが、今回は温暖化対策だけ、非常 に狭い範囲でとらえている」と疑問を投げかける」
放射能汚染や放射性廃棄物の問題は、原子力開発の黎明期から学術会議から国 会まで、また国の内外を問わず議論されてきた問題で、いまさらここの原発にお ける環境アセスメントで取り上げること自体、時代遅れといえよう。
「一方、環境法を専門とする浅野直人・福岡大教授は『環境アセスも、従来 型の地域的な公害や自然保護だけでなく、長期的な地球環境の観点も重要だ』 と一定の評価をしている」
先の東工大の先生の意見より、この福岡大の先生の意見の方がより正しいとい えよう。
我々のコメントの結論としては、朝日の論調と東工大の先生の意見には異議あ りとしたいが、環境省の提出した川内原子力発電所の増設計画に対する環境アセ スメントに関して「同感」するものである。
「G研」代表