
(その2)
さて次に、原子力開発には常日頃から厳しい論評を張っている朝日新聞の社説
は、この日本の規制体制に関してどのような考えを持っているのか、10月4日
付け同紙の社説から検証してみよう。
「だが、1人の大臣が推進と規制という相反する仕事を受けもち、人事交流 で幹部職員が両部門を行き来するような体制が理想的とは言いがたい。安全 行政の信頼性を高めるには、保安院を経産省から切り離すべきだ。海外でも 規制部門の独立は一般的である」
原子力安全・保安院を、経済産業省の傘下から完全に切り離すべきというのが、 朝日の社説の主張である。このことは、前掲の住田先生の視点や我々の主張とも 完全に一致したのである。
保安院のトップは経済産業相であり、経済産業省のもう一つの主要な業務は電 源開発であって、推進のトップと規制のトップが、現行体制では同一大臣であっ て、推進と規制という相反する業務を一人の大臣が受け持つのは、何としても無 理がある。
現行体制の矛盾点は、規制と推進のトップを兼務する大臣に止まらず、両セク ションを経済産業省の官僚が行き来するのは当然の成り行きであろう。これでは 「理想的な体制」とは言い難い、と朝日の社説は主張しているのである。我々も もちろんそう思う。
「安全委の法的権限を強め、その下に保安院を移す形で規制部門を一本化す る。そんな案が効果的だろう。元原子力安全委員会委員長代理の住田健二氏 も先月24日の本紙「私の視点」で、同じような趣旨の主張をしている」
原子力安全委員会を完全に独立した組織におき、その下に原子力安全・保安院 を置いた体制を提案しているのだ。それには原子力安全委員会を法的な権限を強 めなければならないが、この朝日の提案にも住田先生と我々の考えはピタッと一 致したのである。
「安全委を強めるには、技術面の鑑識眼も高める必要がある。メーカーや電 力会社に頼らず、独自に安全性を判断できる力をつけなければ看板倒れだ」
このところは我々の考えと大きなずれがある。
朝日の考えは、独立した原子力安全委員会は安全審査や検査にメーカーや電力 に頼らないで、独自に鑑識眼を高める努力をせよ、という主張だ。恐らくメーカ ーや電力に頼っていたのでは、安全審査や検査に手心が加えられるに違いないと いう憶測が加わっているのであろう。
万一安全審査や検査に手心が加えられ、やがてその施設が事故でも起こせば、 最も危険に晒されるのは、周辺住民ではなく、施設内で働くメーカーや電力の社 員であるからだ。また、その事故でもっとも甚大な損害を被るのは、その民間企 業である電力会社であり、保証契約を結んでいるメーカーであるのだ。
したがってメーカーや電力会社が安全審査や検査において安全委員会に協力を したとしても、「天に唾する」ような手心を加えるようなことを決してしないと 断言できるのだ。
我々の考えは、原子力安全委員会が原子力安全・保安院を吸収して完全に独立 した暁には、むしろ設計し建設したメーカーや、日夜運転しメンテナンスを続け て研鑽を積んだ電力会社の技術者の退職者の中から優秀な人材を採用すべきだと 考えている。