読売新聞(2009年9月29日)

<社説>========================「ドイツ総選挙」

         保守中道政権で原発存続へ


(その3)


 <本文転載>


 ドイツ連邦議会選挙は2大政党時代が終わりつつあること、そして「原発 
回帰」が欧州の新たな潮流になり始めたことを予感させる。        
                                   
 総選挙では、保守のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が第一 
党の座を守り、大連立の相手だった左派の社会民主党(SPD)が歴史的大 
敗を喫した。この結果、同盟と第3党の中道政党、自由民主党(FDP)に 
よる連立政権樹立が確実となった。                   
                                   
 ドイツ統一を成し遂げたコール政権以来、11年ぶりの保守中道政権の誕 
生である。                              
                                   
 選挙戦では、雇用対策、減税による景気浮揚、旧東独地域再建などが争点 
になった。この中で、保守中道と左派の主張がはっきり分かれたのが、原発 
政策だった。                             
                                   
 新政権を担う同盟と自民党は、これまでの原発廃棄政策を見直すと表明し 
てきた。                               
                                   
 ドイツは、社民党と緑の党が政権の座にあった2002年、稼働期間が3 
2年に達した原発を順次廃棄する「脱原発」政策を始動させた。これを転換 
し、稼働期間を延長するというのだ。                  
                                   
 背景には、欧州連合(EU)が旗を振る地球温暖化対策を実行する上で、 
当面、原発に頼らざるを得ないという事情がある。風力など再生可能エネル 
ギーによる肩代わりは、費用対効果の面などで難しいからだ。       
                                   
 欧州では最近、スウェーデンが原発の新規建設方針を打ち出すなど、脱原 
発政策の転換が始まっている。環境先進国といわれたドイツが加われば、  
「原発の復権」は大きなうねりになろう。                
                                   
 戦後のドイツは、同盟、社民党の2大政党のどちらかが、自民党など小政 
党との連立で政権を樹立してきた。だが、30年前に合わせて90%を超え 
ていた2大政党の得票率は、年々低下してきており、今回の選挙では、わず 
か57%に減少した。                         
                                   
 社民党の大敗は、福祉重視型の社会を築いてきた欧州社民主義の行き詰ま 
りを示した。「競争」が不可避な経済のグローバル化の中では、社会的弱者 
を守るにも、経済の持続的成長を確保する必要があるからだ。       
                                   
 ブレア英首相、シュレーダー独首相はかつて、社民主義の自己改革を試み 
たが、起死回生にはつながらなかった。                 
                                   
 来年前半に予定される英総選挙では、労働党から保守党への政権交代が予 
想されている。仏、伊、独に続き、英も保守政権になれば、原発回帰にも拍 
車がかかろう。