(その2)
今回のドイツの政権交代による「原発回帰」の動きを見て、日本の原子力開発
に批判的な人々は何と主張するだろうか。そして同じ政権交代した日本の原子力
政策はどう展開するだろうか。
一つ気がかりなのは、ドイツの社民党と同じく原子力開発に批判的な主張をし ていた日本の社民党が連立与党に加わっていることである。政権与党になって、 しかもその連立与党が発表した地球温暖化対策で2020年までに温室効果ガス の排出量を1990年比で25%まで減らすことになったのだ。政権与党に入っ た社民党は、それでもドイツの社民党と同調して「原発廃棄政策」を貫き通すだ ろうか?
「背景には、欧州連合(EU)が旗を振る地球温暖化対策を実行する上で、 当面、原発に頼らざるを得ないという事情がある。風力など再生可能エネル ギーによる肩代わりは、費用対効果の面などで難しいからだ」
今回のドイツ総選挙の結果を受けて、原発と風力など再生可能エネルギーは、 立場を逆転したのである。すなわち、ドイツ国民はここ20年ばかりの間、それ まで開発してきた原発を廃棄し、風力発電などを推進しようと主張した政党を政 権与党におしやってきたのである。
ところが賢明なドイツ国民は、地球温暖化対策を実行する上で、風力発電では コストが高くつき主流におくことは困難ということにようやく気付いたのである。 そして、やはり原発でなければ、という結論に達したのである。
「欧州では最近、スウェーデンが原発の新規建設方針を打ち出すなど、脱原 発政策の転換が始まっている。環境先進国といわれたドイツが加われば、 『原発の復権』は大きなうねりになろう」
スウェーデンは、国民投票で原発を新規には造らず、12基あった運転中のも のも順次停止にして廃棄していこうという、原子力産業界にとっては最悪の結論 になっていたのである。ところが最近の世論調査では、7割以上の国民が原子力 支持に転じたという。
EU諸国の原子力開発は、長いトンネルを抜け、新たな復活に向かっていると いえよう。イギリスしかり、スウェーデンしかり、イタリアしかり、そしてドイ ツしかりで、いずれの国もかつては原発建設が盛んであったが、チェルノブイリ 原発事故以降新規建設はパタと止まっていたのである。
ところが地球温暖化という新たなグローバルな問題に直面し、一時は風力や太 陽光といった新エネルギーの開発に託せば、温室効果ガスであるCO2排出量が 大幅に減らせると考えた。ところが人々の期待むなしく、新エネルギーだけでは 地球温暖化を阻止することが不可能ということが分かってきたのである。
「社民党の大敗は、福祉重視型の社会を築いてきた欧州社民主義の行き詰ま りを示した。「競争」が不可避な経済のグローバル化の中では、社会的弱者 を守るにも、経済の持続的成長を確保する必要があるからだ」
原子力の復活の気運は、地球温暖化阻止だけによるものではない。地球温暖化 阻止とともに経済の持続的成長にも貢献する対策、すなわち原発が必要不可欠な のである。
単なる地球温暖化を阻止するためだけなら、省エネや新エネだけでもある程度 効果をもたらすかも知れない。しかし、経済活動にブレーキをかけなければなら ない省エネや、イニシアルコストや電気代を押し上げるほどマイナスの影響をも たらす新エネでは、経済の持続的減退どころか、経済の屋台骨まで揺るがしかね ないのである。
地球温暖化という地球滅亡に繋がる現象を止めるためには、我々はある程度の 我慢もいとわない。しかし、それには限度がある。また他に対応策がなく、省エ ネと新エネしかないというなら、これまた最大限、我慢しよう。頼りになる原発 があるではないか。
ドイツの社民党も日本の社民党も、福祉重視型社会を目ざす政党である。福祉 重視型社会はすばらしいが、「社会的弱者を守るにも、経済の持続的成長を確保 する必要がある」のだ。経済の持続的成長のためにも原発は必要不可欠なのであ る。福祉重視だけを主張して原子力反対を主張したが故に、ドイツの社民党は先 の総選挙で歴史的な大敗を記したのだそうである。
「来年前半に予定される英総選挙では、労働党から保守党への政権交代が予 想されている。仏、伊、独に続き、英も保守政権になれば、原発回帰にも拍 車がかかろう」
もうこうなれば、原子力に批判的な人々やマスコミも、「日本はEUに見習っ て脱原子力路線を進むべきだ」とは、よもや主張するまい。
ただ、原子力産業に追い風は大いに歓迎すべきだが、永い眠りからさめて、そ の間に怠ってきた人材育成、とりわけリーダーの育成における遅れがいささか心 配の種である。
「G研」代表