◆「金融立国」論の倣慢
金融の役割とは、何らかの生産活動を支援することであって、独り歩きす
るものではない。金融が独りで走った結果が、米国のサブプライムローン問
題だ。
「金融立国」論は、生産活動よりも金融を優先させる。先進国たるもの自
国が働くのではなく、他国を働かせれば良いとする、きわめて倣慢(ごうま
ん)な発想である。そのおごりが世界金融危機を招いたといえる。
企業の経営の目的は、利益ではなく、その企業の持つ独自の技術による社
会貢献だ。貢献を続けるためにこそ適正利益が必要なのだ。
となれば、日本の選択すべき道は、「金融立国」ではなく、「科学技術創
造立国」であることば明らかだろう。
世界は、ITによる「デジタル情報革命」の時代から「環境エネルギー革
命」の流れにある。まさに、無資源国の日本が目指すべき方向だ。
日本は人口が減り、高齢化する。右肩上がりの成長は期待できない。一つ
だけ、光明があるとすれば、太陽光発電や2次電池(蓄電池)、燃料電池、
電気自動車など環境関連の科学技術だ。
日本は優れた技術をもっている。それを、どう産業として育成していくか。
企業でも官庁でも新産業の創出能力が問われている。
今の私の仕事も、この発想から生まれたものだ。
南米チリの5640mの高山に世界最高水準の赤外線望遠鏡(口径65m)
を造る事業や慶応大学の電気自動車事業に投資している。前者は、東京大学
と一緒に進めている事業だが、天体を観測するだけでなく、温暖化ガスの畳
まで精密に計測できる。
また、周辺に広がるアタカマ砂漠は、年間を通じてほとんど雨が降らない。
この気候を利用して、太陽光発電所を造り、超伝導送電と組み合わせる計画
も立てている。
天文学と太陽光発電技術を結びつけ、環境エネルギーという社会問題への
貢献を狙っているのだ。
過去の専門知識にとらわれず、新たな問題設定能力を備えた理系人間が必
要だ。環境エネルギー革命に乗り出す日本で指針を示す気概を持とうではな
いか。■
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