朝日新聞(2009年9月21日)

<The Asahi Shimbun GLOBE>

[World Economy=先読み世界経済]

  「理系人間」よ、発言せよ

  環境エネルギー革命に必要な大局観

                          藤原 洋

                         (ふじわら ひろし=インターネット総合研究所長)


(その2)


 「私は理系人間を企業や官庁でもっと優遇しろ、と言っているのではない。 むしろ、理系人間の多くが、企業などの組織マネジメントやリーダーシップ に対して関心が低く、発言も少かったことを危倶(きぐ)している」    

 我々は日本の原子力産業の黎明期から携わってきたから、冷遇されるどころか ずいぶん甘やかされてきた思い出しかないのだが、一般的な理系人間のおかれた 立場は、文系と比べて冷遇されてきたのであろうか。他分野はあまり詳しくはな い。

 藤原氏は、理系人間をもっと優遇せよと主張されているのではなく、優遇され るように理系人間自身がもっと発憤して、企業や組織のリーダーを目指せとエー ルを送っていらっしゃるようである。

 ただまあ、戦後の平均点教育を受けて育ってきた者にとって、一朝一夕にリー ダーの資質が備わるものではなく、リーダーになる者は小さい頃からそれなりに 英才教育が必要ではないだろうか。

 原子力界の人材でいえば、そもそもアメリカで始まった原子力工学科は、将来 の原子力界のリーダーを養成するために創設されたと聞いている。したがって全 米の各大学にあった原子力工学科のほとんどは大学院のみで、アンダーグラジュ エートはないのが普通と聞いている。

 「理系人間は専門領域に好奇心を集中させて、のめり込む人が多い。研究者 には必要な資質だが、バランスに欠ける面もある。社会観、歴史観、大局観 を身につけることが必要だ」                      

 「社会観、歴史観、大局観」を身につけなければならないのは、理系に限らな い。文系であろうとリーダーになるにはこういう資質が問われるであろう。

 ただ、それには暗記物の科目中心の受験教育一辺倒という日本の今日の教育で は、学校教育以外に家庭教育がしっかりしているよほどの家庭で育った人間でな いと、理想のリーダーは育たないだろう。今のままの日本社会ではかなり難しく、 よほどの抜本的な教育改革をしないと無理だろうと思える。

 「自然や社会の根源的な問題に接して大局観を備えた理系人間が、今ほど、 経営や社会に積極的にかかわるときはないのではないか」         

 「自然や社会の根源的な問題に接して大局観を備えた理系人間」は、果たして いるだろうか。いても一握りだろう。純粋に日本社会のみで教育を受けた理系人 間は、理科も数学も受験のためには片っ端から暗記せよと教えられ、難関を乗り 切ってきたのであるから、無理からぬことである。

 「金融の役割とは、何らかの生産活動を支援することであって、独り歩きす るものではない。金融が独りで走った結果が、米国のサブプライムローン問 題だ」                                

 アメリカの金融業界、とくにマネーロンダリングなどマネーゲームを牛耳って いるのは、文系人間より理系人間といわれている。特に数学で学んだ統計やゲー ム公式の応用で、その一例がサブプライムローンではないだろうか。

 我が国でもバブルの頃は特に、一流大学理学部卒業生が、原子力研究所の核融 合などの研究分野に進まず、破格の給料で証券会社に就職する者が多かったと聞 く。

 「世界は、ITによる「デジタル情報革命」の時代から『環境エネルギー革 命』の流れにある。まさに、無資源国の日本が目指すべき方向だ」     

 我々は、まさしく「無資源国の日本」を憂えて「環境エネルギー」のために原 子力産業を支え続けてきたのである。

 確かに、民主主義社会にあって、環境エネルギーのための原子力を健全に進め るためには、狭い原子力界に止まっていたのでは国民からの理解はなかなか得ら れないだろう。我々の仲間が政界などにも打って出て大いに発言せねばならない だろうということは理解できる。

 これが藤原氏がおっしゃる「理系人間よ、発言せよ」だろう。

 「過去の専門知識にとらわれず、新たな問題設定能力を備えた理系人間が必 要だ。環境エネルギー革命に乗り出す日本で指針を示す気概を持とうではな いか」                               

 おっしゃるとおりである。

               「G研」代表

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