読売新聞(2001年5月18日

[社説]========米原発再開

    流れを変える新エネルギー政策

<その3>

 原発の弱みは、使用済み核燃料の処理問題だ。この懸案に抜本的な解決策
を提示できれば、国際世論の変化も加速するに違いない。        
 使用済み核燃料の再処理で、プルトニウムや残存ウランを抽出してリサイクルする必要性は、ウラン資源の存続や経済的な競合性の理由からここ数年ないにしても、貴重な資源であることに変わりはなく、それらを安全に取り出す技術の蓄積は、絶え間なく続けることは重要です。ですから、我々は、使用済み核燃料の処理を「原発の弱味」などとは思っていません。むしろ、地球資源のリサイクルは、人類の当然の義務と考え、今後も原子燃料のリサイクル事業には、喜んで協力して行く所存です。

 米政府の新政策の特徴は、驚くほどの楽観主義だ。規制緩和と技術開発で、
経済成長と環境保護とエネルギーの安全保障を、同時に達成できるとの自信
が大きな基調となっている。                     
 開発途上の国で、大きな煙突から黒煙モクモク、悪臭ムンムンという光景によく出くわしたものです。これがいい例で、国の経済が低迷すれば、環境問題などには投資できす放置されてしまいます。また、エネルギーの安全保障にも金がかけられず、いい人材も集まらないといった状況になるのは必定でしょう。経済と環境、それにエネルギーまで、総合的に考えなければならないのではないでしょうか。そんなに驚くに当たりません。「規制緩和と技術開発で、経済政調と環境保護とエネルギーの安全保障を、同時に達成できる」という姿勢は、最も至極、当然の政策だと思います。

 カリフォルニア州で顕在化した電力不足に対しては、規制緩和で送電網を
拡充し、広域的送電で対応する考えを示している。だが、だれがどう費用を
負担して送電網を建設するかは明らかでない。             
 カリフォルニア州の電力不足は、この夏の電力需要のピーク時にも危機的状態になるだろうといった見方もあるくらいですが、だからといって、州内に急きょ発電所の建設を今からはじめても、数カ月、数年ではまったく間に合いません。何処からか持ってくる以外方法はないのです。州間で融通し合うためにも送電網の拡充はとりあえず必要でしょう。

 米国のエネルギー政策は、連邦と州の権限が複雑に絡み、民間企業への強
制力もはっきりしない。                       
 これは昔から指摘されているアメリカのアキレス腱です。エネルギーや環境は、防衛などと同様、国家規模、つまりアメリカでは連邦レベルで考えなければなりません。また、民間企業への強制力は、ある程度公益事業と認め、供給義務を課する反面、健全な利益確保も認めるといったシステムを復活させることにつきると思っています。

 米国のエネルギー価格が高騰した大きな要因は、エネルギー関連企業が効
率化のため供給力を極端に削減したことだ。この構造にメスを入れず、規制
緩和と技術で危機を突破しようとすることには、一抹の危うさもつきまとう。
 安全許認可規制や立地に関わる規制など、事業の自由化が進んでも、特に発電所の建設にはまだまだ足枷、手枷の規制が残っています。それらがあるために何年も前からの先行投資を強いられていますから、利益が短期間で上がらない発電所の建設には、健全な会社経営としては当然、後回しにしてきたのです。

 そうした中で打ち出された原発の復権だが、「安全性を重視しつつ着実に
開発する」を基本としてきた日本には歓迎できる政策変更である。    
 まあ、その通りでしょう。このアメリカの「新国家エネルギー政策」は、日本だけでなく、各国で見直す気運が高まると思います。「地球温暖化は防止しなければならない、だけど原子力はダメ」では、健全な「国家エネルギー政策」はつくれないでしょう。

 「環境派」といわれる原子力反対派にとって、歓迎できない「新国家エネルギー政策」でしょうが、エネルギー資源の乏しい日本にとって、好むと好まないに関わらず、これからも原子力に依存して行かなければなりませんから、アメリカに限らず、健全な原子力開発を進める国が増えることは好ましいかぎりで、大いに歓迎するところです。

         「G研」代表