読売新聞(2009年8月20日)

<加速・原発ビジネス・上>

          日米欧 白熱の受注合戦


(その2)


 <本文転載>


 地球温暖化問題への対応や新興国のエネルギー需要の高まりなどを背景に 
原子力発電所の建設計画が世界的に広がっている。技術力を誇る日本メーカ 
ーは商機拡大を狙い、欧米勢は官民挙げた受注合戦を繰り広げる。加速する 
原発ビジネスの最新事情を紹介する。                  
                                   
               ◇                   
                                   
 「原発は莫大(ばくだい)な輸出や雇用、インド国民が必要とする大量の 
エネルギーをもたらす」。クリントン米国務長官は先月20日、訪問先のイ 
ンドで原発の重要性を繰り返した。米企業はインドが計画する2か所の原発 
受注を目指す。政府の後押しで、先行する欧州企業を追い落とそうという狙 
いだ。                                
                                   
 「原発外交」ではフランスも負けてはいない。サルコジ大統領は5月、ア 
ラブ首長国連邦(UAE)に新設する仏軍基地の開所式に乗り込んだ。基地 
を通じてUAEとの関係を深め、2020年までに稼働する原発3〜4基の 
受注を優位に進める思惑だ。仏政府が提示したルーブル美術館の分館計画に 
は「受注を当て込んだ餌」(日本メーカー)との声が漏れる。       
                                   
 過熱する欧米のトップセールスは世界的に広がる原発回帰の動きを物語る。
                                   
 米国では1979年のスリーマイル島事故以来続いた原発建設自粛の流れ 
が02年に転換され、30基以上の新規計画が動き出した。欧州も86年の 
チェルノブイリ事故を契機に広がった脱原発の動きを修正し、イギリス、イ 
タリア、スウェーデンなどが相次いで原発容認へかじを切った。      
                                   
 世界で建設、計画中の原発は今年1月時点で約120基。世界で稼働する 
原発(432基)が3割近く増える計算となる。             
                                   
 最大の要因は、新興国などを中心にエネルギー需要が急増、慢性的な電力 
不足が懸念されることだ。中国は11基の原発を稼働させても国内発電量の 
2%程度を賄うに過ぎない。自国で電力を確保したいエネルギー安全保障意 
識の高まり、化石燃料に比べて二酸化炭素をほとんど排出しない温暖化対策 
上の観点もある。                           
                                   
 主な担い手は、東芝と米ウエスチングハウス(WH)、日立製作所と米ゼ 
ネラル・エレクトリック(GE)、三菱重工業と仏アレバの3陣営に集約さ 
れ、いずれも日本企業がからむ。大規模な原発の建設費は1基約4000億 
円。日本企業にとって巨大ビジネスとなる可能性を秘める。東芝は原発関連 
の売上高が15年度には1兆円に倍増すると見込んでいる。他社も「原発を 
建設・運転し続けてきた日本の強みが生きる」(日立幹部)と意気込む。  
                                   
 だが、思惑通りに拡大するかどうかは予断を許さない。米国は5月、環境 
汚染を懸念する意見に配慮し、ネバダ州で進めていた使用済み核燃料の最終 
処分場計画を凍結した。根強い核アレルギーに加え、世界不況が影を落とす。
業績低迷から抜け出せない企業は投資リスクが重荷となり、政府による支援 
も財政悪化が足かせとなる。原発ビジネスの行方は期待と懸念がなお交錯し 
ている。