(その2)
「選挙後の政権が逃げてはならない難題は「負の遺産」だ。原子力は利用す
る限り放射性廃棄物がつきまとう。使用済み核燃料から出る高レベル放射性
廃棄物は数百年、場合によって1000年以上の安全管理が必要になる」
この考えには少々異論がある。確かに原子力には放射性廃棄物が排出されてい る。しかし、使用済み核燃料から出る高レベル廃棄物は、それ自体危険なものだ が、量からみれば、化石燃料から出る二酸化炭素の比ではない。平均的な家庭が 1年間に使う電気を発電するのに使われる核燃料は小指の1関節程度だから、そ の高レベル廃棄物の量が「小指1関節」より減ることがあっても増えることがな いから、高レベル放射性廃棄物の量は極めて少ないと想像できるだろう。
危険物でもその量が少ないなら、十分管理が可能になる。逆にあまり危険でな くても、その量が膨大なら制御不可能になりうるのである。前者は高レベル放射 性廃棄物であり、後者が二酸化炭素である。
また、その放射能のレベルはどんどん減衰していくから、我々専門家は長年月 の安全管理に一抹の不安も感じていない。したがって高レベル放射性廃棄物の処 分場は、電気の大消費地である大都会の、例えば公園の地下300メートルに貯 蔵所を設ければよいと提案している。
「ただ、原発に関する考え方が同じだとしても、核不拡散が絡むプルトニウ ム政策、経済性が難点の高速増殖炉の開発は考え方に微妙な違いがありそう である。もちろん核燃料サイクル確立を前提にした路線をすぐに転換すれば 大混乱する。政権選択がどうあれ、路線は継続しかないだろう」
エネルギーや環境問題は、グローバル(全地球的)でかつロングレンジ(長期 的)に考えなければならないと言われる。従って日本国内で解決しようとするの ではなく、地球全体で解決の糸口を見出す姿勢こそ重要なのである。
とくに地球温暖化の対策を考える時には、途上国も参加してもらわなければな らないが、彼らも経済発展の阻害要因になりかねない省エネルギーやコストがか かりすぎる太陽光や風力発電には取り組みたくないだろう。
やはり発電コストが安く、大量に電力の供給を可能にする原子力をやりたいの はやまやまだ。しかし、独自の開発を可能にするほど彼らの技術力は伴っておら ず、また外国からは核兵器拡散のあらぬ疑いの目で見られがちになる。やはりこ こは国連のような機関が核燃料サイクルを国際的に供給するシステムの構築が必 要になってくる。
つまり、途上国の発電炉向けに成形加工した核燃料を提供し、また使用済みの 燃料も解体前に引き取る国際機関がどうしても必要になる。そうすれば、使用済 み燃料を独自で再処理して核兵器への転用も封じ込めることができるからだ。
「地域の後世に恩恵をもたらすかどうか定かでないまま、地方自治体の首長 や議会、ひいては地域住民が立地に名乗りを上げ、将来世代に『負の遺産』 を残す決断をするのは容易ではない」
まず高レベル放射性廃棄物を我々は「負の遺産」等とは思っておらず、そこに 詰まった核分裂生成物の中にはレアメタルのような貴重な物質も混じっているの であって、将来、放射能が十分減衰してそれらを取り出すことができたら、それ はまさしく「お宝」になりうるものである。
しかし、現時点でその「廃棄物」の引き取り手はなかなか見つからないのは当 然だから、都道府県ベースか将来の道州ベースかで、電力の自給自足を義務づけ る必要がある。つまり、原発立地を過疎地に任せ、電気の大消費地の大都会は知 らぬ存ぜぬでは不公平だろう。
原発立地の電力供給地以外の都道府県または道州以外は、電力の消費都道府県 になる訳だから、放射性廃棄物は引き受けなけれならないというルールさえ施行 すれば、持ちつ持たれつの関係はうまく機能するだろう。
「候補地として応募したり立地が決まれば自治体には手厚い交付金がつく。 廃棄物は安全性を確保して地下深くに収容し、100年後には完全に埋め立 てる。地元は埋め立て完了まで何らかの見返りを期待できるだろうが、それ 以降はなくなる」
札束をちらつかせればちらつかせるほど、廃棄物処分場はますます危険場所、 負の遺産、厄介物を引き受けるという印象が強くなるだろう。この方法では、国 を挙げて説得しても、候補地に上げられた地元住民はかたくなになって理解しよ うとしないだろう。この地元の抵抗は原発立地の比ではないと思われる。
原発の立地は過疎地の地域開発と、国家のエネルギー開発との共存共栄策とし て進めてこられたが、廃棄物処分場をも含めた立地選定には、最早従来のやり方 では進まないだろう。
ここは、発想の転換で、エネルギー問題と環境問題を一挙に解決する方法に変 える時期に来ている。新しく始まる国会でこれらのテーマに関して建設的な議論 が展開されることを切に願っている。
「G研」代表