日本経済新聞(2009年8月23日)

<中外時評>==========論説委員 清水正巳

    「原子力」の難題も選挙で語れ

                 廃棄物処分に道筋つけよ


(その1)


 「選挙で語られぬ政治課題に原子力がある。原子力は地球温暖化の防止に絡 んで温暖化ガスの排出が少ないと重要性が増している。米欧では原子力回帰 が顕著で、温暖化防止には自然エネルギー利用を拡大しながら、エネルギー 安全保障を考え原発建設を進めるというのが世界の潮流だ」

 このテーマを取り上げてももう今回の選挙には間に合わないだろう。しかし、 次回以降の選挙、あるいは選挙後に始まる国会審議のためにどうしても言ってお かなければならないテーマだ。これは、ここに取り上げた日経の清水論説委員も 同じ気持ちだろう。

 今回の選挙に際して提出された各政党のマニフェストには、あまり原子力問題 に関する主張は見られない。いや、皆無と言っても過言ではない。おそらく推進 にしろ反対にしろ、原子力の関して言及しても、票には繋がらない。減らすこと があっても増えないテーマについて言及することはない、との思いからだろう。

 しかし、エネルギーや環境問題は、中でも両者に強く関わっている原子力問題 は、極めて思い政治問題といえよう。

 「政権選択を問う選挙戦はたけなわ。各党はマニフェスト(政権公約)を掲 げて競い合い、政党間の批判も激しい。公約には国民受けする政治課題が並 ぶが、政党、候補者が選挙民に問うべきは難題への対応、気構えではないか」

 その通りだが、「猿は木から落ちても猿だが、議員は選挙に落ちたらただの人」 といわれているように、厳しい選挙戦に勝ち抜くため、票に繋がらない政治課題 に関する考えを開示しろといってもどだい無理なような気がする。

 しかし、候補者個人としては難しいにしても、政党のマニフェストには、目先 の一票のためばかりではなく、遠くに視点をおいた目標や難問にも避けることな く言及してもらいたいものである。

 「自民党も民主党も原子力の推進では一致している。だからどちらの党が政 権を担おうが原発建設を進め稼働率を向上させる政策を進めるのが確実だ。 争点にならないのもそれが理由だろう」

 それはそうだが、今までの反省にたった推進の方法や速度には、両党にもそれ ぞれのアイディアがあるだろう。「安全には万全を期して進める」といった従来 のような玉虫色の主張では最早通らないだろう。

 何故なら、地球温暖化はすでに我々の暮らしの中に入り込んでいるから、その 対応には即座に取り組まねばならず、それには原子力開発の健全な推進と電気自 動車の普及という対策の二本柱を如何に押し進めるかにかかっているのだ。

(次ページにつづく)