日本経済新聞(2009年8月8日)

<温暖化ABC−3>============[企 業]

      動き始めた「脱石油」


(その2)


 <本文転載>


 「乾いたぞうきん」。日本の産業界は地球温暖化対策への取り組み強化を 
求める声に、自らの状況をこう説明し、「もう絞れない」と訴える。    
                                   
 一例に鉄鋼会社が粗鋼1トンを生産するのに使う石油の量がある。米国0 
.74トン、ドイツ0.69トン、中国0.76トンに対し、日本は0.5 
9トン。量が多いほど二酸化炭素(CO2)など温暖化ガスを多く排出する。
日本の使用量が最も少ないのは、技術革新が進み、エネルギー効率が高いた 
めだ。                                
                                   
 ここからさらに削減するには「各国でコストが一番高くなる」との見方も 
出ている。一方、世界に日本の技術が普及すれば、日本の排出量の2割にあ 
たる3億トンのCO2が減らせるとの試算もある。            
                                   
 だが日本は2020年の温暖化ガス排出量を05年に比べ15%減らす中 
期目標を表明し、衆院選で政権交代を目指す民主党は1990年比で25% 
削減を掲げる。産業界は一段の削減努力を求められる。          
                                   
 大きな課題は電力会社が石油などを燃やす火力発電からガスをほとんど排 
出しない原子力発電にどこまで転換できるか。政府の中期目標では達成に向 
けて原発を9基増やす必要がある。だが設備新設や安全対策などに多額の費 
用がかかるうえ、増設には周辺住民などとの調整に時間がかかる。産業界に 
は「原発はよくても最大6基しか増やせない」との見方もある。      
                                   
 温暖化対策を成長のテコにする発想の転換も重要だ。米オバマ政権は環境 
対策を経済活性化につなげようと、次世代自動車の普及などを促進する「グ 
リーン・ニューディール」政策を打ち出した。日本でも自動車各社が競うよ 
うにハイブリッド車など次世代自動車を投入。景気対策に盛り込まれた減税 
などを背景に販売が急増している。                   
                                   
 「石油にこだわるな」。こんな掛け声のもとで新日本石油が電気や水素で 
走る自動車に対応しようとガソリンスタンドを見直し始めた。石油元売りで 
は昭和シェル石油も既に太陽電池事業に参入している。温暖化対策は企業の 
事業構造を大きく変える可能性もある。