日本経済新聞(2009年7月29日)

 [電力などエネルギー整備]

      EU、効率投資へ新制度

                   情報共有、重複避ける


(その2)


 <本文転載>


 【ブリュッセル=瀬能繁】欧州連合(EU)が域内の電力やガス、石油な 
どエネルギー関連投資の最適化に乗り出す。加盟27カ国の投資案件情報を 
欧州委員会に集約、共有する新制度の導入が柱。欧州委が域内のインフラ整 
備の進展状況を点検し、1兆ユーロ(約135兆円)を上回る巨額の長期投 
資の調整を進める。二重投資を避け、限られた財源で効率的に基盤整備を進 
めるほか、国境をまたぐ温暖化対策やエネルギー安全保障の確保にも役立て 
る狙いだ。                              




 新制度は欧州委がまとめ、2010年初めの閣僚理事会での採択をめざす。
ピエバルグス欧州委員(エネルギー担当)は「投資の透明性確保はEUの長 
期的なエネルギーシステム改善に重要」と語った。            
                                   
 EUは20年までに温暖化ガスの排出を1990年比で20%削減、太陽 
光や風力など再生可能エネルギーの割合を20%に高める目標を掲げている。
目標実現には、例えば電力分野で30年までに1兆ユーロ、ガス供給網の整 
備で1500億ユーロの投資がそれぞれ必要という。           
                                   
 新制度は各国によるエネルギー関連の投資情報を欧州委に集め、各国に開 
示する仕組み。対象は石油、ガス、電力などのインフラ整備事業。バイオ燃 
料や原子力のほか、石炭火力発電所から出る二酸化炭素(CO2)を地下に 
貯留する事業(CCS)も含まれる。                  
                                   
 欧州委は各国が進める事業の工程を管理。将来の域内エネルギー需給を読 
みながら各国に事業の前倒しを求めたり、複数国にまたがる事業を円滑に調 
整しやすくする。域内の投資計画の進展度合いが一目でわかるようになるの 
で、二重投資による無駄遣いなどを減らす効果も期待できる。       
                                   
 EUは昨年まとめた景気対策として約40億ユーロをエネルギー関連のイ 
ンフラ整備に投入することを決めている。ただ景気悪化でエネルギー関連投 
資を削減したり、遅らせたりする加盟国もある。欧州委は新制度を通じ、E 
U全体として中長期の基盤整備に横断的に取り組む。           
                                   
 CCSをはじめとする次世代のエネルギー基盤整備は温暖化対策にとって 
不可欠。日米も急ピッチで温暖化対策を進める中、その裏付けとなるインフ 
ラ整備に早めに道筋をつけることは、EUの国際競争力強化に向けて急務と 
の判断がある。                            
                                   
 またEUはロシアへのエネルギー依存度が高いという課題も抱える。投資 
情報共有などで機動的に自前のインフラを高度化できれば、エネルギー安保 
上の優位性確保にもつながるとみられる。