日本経済新聞(2009年7月29日)

 [電力などエネルギー整備]

   EU、効率投資へ新制度

         情報共有、重複避ける


(その1)


 エネルギー問題を解決するためには、ロングレンジ(長期的)でグローバル (全地球的)に考えねばならないといわれるが、 「欧州連合(EU)が域内の電 力やガス、石油などエネルギー関連投資の最適化に乗り出す」 ことは、まさしくこの考えで進めようとしていることを意味する。

 もともとEUにはロシアから天然ガスの供給を受けたり、フランスの原子力発 電所から電気の供給を受けたりして、EU全体でエネルギー問題に対処してきた 経緯がある。

 原子力発電所の建設には、反対運動が強い国があってなかなか難航している国 があれば、フランスのようにスムーズに進められた国もある。とりわけドイツな どは、州ごとに許認可体勢が敷かれたこともあって、技術立国でありながら原子 力発電所の開発が止まってしまった国もある。このような状況下でもフランスと ドイツは陸続きというメリットもあって電力の供給を受けることができたのであ る。

 ドイツは原発を止めても風力や太陽発電で乗り切っているではないか、といっ た情報が日本などには流れていたが、事実は、フランスの原子力発電所から電気 の供給を受けられたから、たとえ原発が建てられなくてもドイツは先進工業国と しての地位が保てたのだと考えられる。

 日経の記事の中に載せている「EU域内で稼働、建設、計画・検討中の原子力 発電所」と題する表によると、EU全体で建設中こそ4基と少ないが、計画・検 討中は37基とずいぶん増えたものである。

 旧ソ連の軍事併用原子力発電所、チェルノブイリの事故でEU諸国は放射線の 被害を受け、原子力発電所の建設を取り止める国も出てきたのである。安全性を 軽視した旧ソ連型の黒鉛原子炉と、日米欧で進めてきた安全設計に基づく軽水炉 との違いを認識したEU諸国は、原子力復活を決定した国も増えてきている。

 例えば、イタリアは、稼働中ゼロとなっているが、かつて70年代初頭までは 積極的に進めていた国であった。この表によって10基もの原子力発電所の建設 を計画しているとは、嬉しい限りである。

 スウェーデンは、国民投票によって当時稼働していた12基の原発を徐々に廃 炉にもっていくことになったが、そのうちの2基まで実際に廃炉にした段階で、 思い止まったと聞いている。まもなく新たな建設計画も発表されるだろう。

 ドイツは、原子力の反対運動が盛んな国で、しかも安全許認可を一括して国で 見るのではなく、各州ごとにある規制当局が許可するという複雑極まりないシス テムが災いしてなかなか進まなくなったのである。現政権の首相などは、サミッ トで原子力の復活を言及しているが、一旦中止した開発体制を立て直すことは並 大抵のことではないのだろう。

 フランスは、自国で必要な電気の9割以上を原発で賄えるだけの原子力発電所 をすでに持って稼働させているが、そのうちの何割かは近隣のEU諸国に電気を 輸出している。送電線だけ繋がっておれば、電気も立派な輸出製品であることを 思い知らされる。

 「欧州委は新制度を通じ、EU全体として中長期の基盤 整備に横断的に取り組む」 としているが、我が国も見習うべきだろう。ただ、原子力開発の足かせとな っている地方自治体(州)単位の安全規制体勢の改善が見られず、風力や太陽光 発電でお茶を濁しながらフランスの原発から供給を受けているドイツの姿勢だけ は見習って欲しくないものである。

             「G研」代表

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