IAEA事務局長に天野氏
「核なき世界」へ重責
【ウィーン=玉川透】唯一の被爆国・日本が、「核の番人」のトップの座
をつかんだ。国際原子力機関(IAEA)の次期事務局長に就任する天野之
弥ウィーン国際機関日本政府代表部大使(62)は、「核なき世界」に向け
て国際社会が動き出そうとしているだけに、重い責任を背負うことになる。
=1面参照
IAEAでは、原子力技術を持つ先進国と持たざる途上国が、さまざまな
場面でぶつかり合う。事務局長選も例外ではなく、途上国代表の南アフリカ
のミンティIAEA大使に対し、先進国代表とみなされた天野氏の苦戦が予
測されたが、ふたを開けてみれば、一部の途上国にも食い込んで当選を決め
た。これは「唯一の被爆国」代表として中立的立場を訴え続けた日本への期
待の表れともいえる。
また、選挙がこれ以上長引けば、対応を協議しなければならない課題が多
い9月の年次総会に支障が出かねないことへの懸念も有利に働いたとの見方
もある。いずれにしても、核軍縮・不拡散を外交の大きな柱に据え、国連安
保理常任理事国入りを狙う日本にとって、権威ある国際機関のトップの座を
勝ち得たことは大きな弾みとなりそうだ。
しかし、天野氏を待ち受ける課題は決して容易ではない。原子力利用を巡
っては、地球温暖化対策などで需要が伸びる中、北朝鮮やイランの核疑惑な
ど平和利用を隠れみのにした核兵器開発への懸念が高まっている。
IAEA監視要員を国外追放した北朝鮮は、核実験を再び強行。IAEA
の協力要請にもかかわらず、国連決議に反してウラン濃縮活動を拡大させる
イランや、シリアの核疑惑も解決に向けた進展がみられない。
また、天野氏が選出された信任投票では、当選に必要な支持をかろうじて
上回る「薄氷の勝利」。IAEA加盟国のなかには天野氏を事務局長にした
くなかった国も少なくないことを意味する。
核査察の専門家集団であるIAEAの役割の重みが増す中で、これまでの
先進国と途上国の壁を突き崩して新たな展望を示せるかも、天野氏に問われ
る課題だ。
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