朝日新聞(2009年7月3日)


<1面トップ・国際面>

   IAEAトップに天野氏


            「核の番人」日本人初


(その2)


 今ひとつ、途上国にとって経済発展を阻害している最大の原因は、ふくらみ続 ける防衛予算であろう。途上国を取り巻く環境は、宗教や民族に代表される紛争 が絶えない地域にあるのが常だ。この国家予算に占める防衛費の多さこそ国の経 済発展を阻害している原因ではないだろうか。

 膨大な軍隊と通常兵器に対応した軍事予算を格段に減らすことができ、しかも その核抑止力による防衛効果が格段に上がるなら、核兵器を小規模でも持ちたい と思っている途上国リーダーの存在を頭から否定することはできない。

 「核兵器のない平和で安定した世界」とオバマ大統領は演説した。アメリカの 歴代大統領の中で、オバマは最も核軍縮を進めてくれる大統領と世論から歓迎さ れている。しかし、本当の平和で安定した世界にするには、核兵器も含めたあら ゆる兵器・武器のない世界を目ざさなければ、実現不可能ではないだろうか。

 核兵器を含めたあらゆる兵器が、最早「無用の長物」となる時代になってはじ めて「平和で安定した世界」といえるのではないだろうか。

 国家間で、民族間で経済格差がなくなった状態に導かなければならない。その ためには潤沢なエネルギーの供給、できればその供給にともなって二酸化炭素を 排出しないエネルギー供給システムこそ途上国にも広めなければならない。

 原子力発電は核兵器への拡散にも繋がりかねないから、途上国で政治的に不安 定な国は太陽光や風力といった自然エネルギーを率先して採用せよというのでは、 途上国は了解しないだろう。

 IAEAは、核の番人としての役割はもちろんこれからも重要だろう。しかし、 真面目に平和利用に徹しようとする国の足を引っ張るようになってはならない。 むしろ、原子燃料サイクルの国際サービス機関創設にもIAEAは大いに寄与せ ねばならないだろう。

 「天野氏は当選を決めた直後の記者会見で『日本は原子力の平和利用と核不 拡散を両立しているモデルともいうべき国。その経験を世界に役立てていき たい』と述べた」                           

 天野新事務局長の今後の活躍に大いに期待しようではないか。

(次ページにつづく)