
(その1)
国際原子力機関(IAEA)の次期事務局長に天野之弥(ゆきや)氏が選任さ
れた。核の番人といわれるIAEAのトップに日本人が就くのは今回が初めてで
ある。
IAEAは1957年の創設だから、52年目にしてはじめて世界で唯一の被 爆国である日本からの代表がトップに就くことになったのだから、あまりにも遅 い就任ともいえるが、とにもかくにも核の番人のトップには相応しい国からの選 任と、同じ日本人として、また同じ原子力業界の末席を汚す者として、喜びを噛 み締めたいと思う。
唯一の被爆国である日本の代表が、この「核の番人」機関のトップに三顧の礼 を尽くして迎えられたのではない。二回の決選投票で南アフリカの代表との決選 投票で、しかも僅差で勝てたという。朝日は次のように「薄氷の勝利」と表現し ているが、我々は日本人がこのポストに就くのは当然と思ってきた。
「また、天野氏が選出された信任投票では、当選に必要な支持をかろうじて 上回る『薄氷の勝利』。IAEA加盟国のなかには天野氏を事務局長にした くなかった国も少なくないことを意味する」
とりわけ途上国は、唯一の被爆国といえども、先進国である日本から迎えるこ とをかたくなに拒否しているのである。その理由は何か、朝日は詳しく述べてい ないが、我々は詳細に分析する必要があると思う。そして天野・新事務局長のこ れからの活動に際して一助になればと考えている。
これから経済発展しようという国にとっては特に、安定・安価なエネルギーの 供給量が不可欠であることはいうまでもない。それには原子力発電所の建設こそ 不可欠と当然考えている。その平和利用に、厳しい核不拡散という制約がつけら れたのではたまらないと考えても致し方なかろう。
核不拡散の制約で厳しくいわれるなら、核燃料の提供と使用済み燃料の引き取 りくらいは国際機関でやってもらいたいと考えても当然の要求だろう。アメリカ のブッシュ前政権では、「国際原子力エネルギーパートナーシップ」(GNEP) と呼ぶ提案をしてその実現に動き出していたが、オバマ大統領はそれを中断して しまった。これから原子力発電所の建設計画を持つ国にとって、原子燃料の取り 扱いに関して神経質になり、それがIAEA事務局長選任投票に現れたのではな いか、と見ている。