朝日新聞(2009年6月10日)

<社説>===================[電気自動車]

       石油がぶ飲みに別れを


(その2)


 <本文転載>


 そのクルマには、エンジンもマフラーもない。三菱自動車が7月から販売 
する世界初の本格的な量産型電気自動車「アイミーブ」だ。エンジンなしで 
動くのは、モーターを動力に使っているから。石油資源を使わないクルマの 
新時代を期待させる。                         
                                   
 09年度の販売こそ法人向け中心に約1400台と控えめだが、10年4 
月に一般向けにも販売を始め、11年度に1万5千台の販売を目指すという。
                                   
 1キロ当たりの走行にかかる電気料金は昼間で3円とガソリン車より大幅 
に安くなるが、車両価格は、国の補助金を受けても約320万円。リチウム 
イオン電池により160キロ走れるが、フル充電には家庭のコンセント(1 
00ボルト)で約14時間かかる。                   
                                   
 こうした価格や使い勝手では、エンジンとモーターを併用しているトヨタ 
自動車やホンダのハイブリッド車にかなわない。改善を急がねば、なかなか 
普及が進まないかもしれない。                     
                                   
 それでも、すばらしい長所がある。二酸化炭素(CO2)の排出は、走行 
中はゼロ。電力会社が発電する時に出る分を計算に入れても、ガソリン車の 
約3分の1だ。排ガスで地球環境を悪化させてきたクルマの「原罪」を小さ 
くし、温暖化防止に役立つ。                      
                                   
 電気自動車は富士重工業も7月に発売する予定で、日産自動車は10年秋 
に年5万台規模で生産を始めるという。いずれ太陽光発電による電気を使う 
ことが一般化すれば、ほぼ完全なエコカーが走り回る時代も夢ではない。技 
術開発と低廉化に期待したい。                     
                                   
 米フォードは世界初の量産型ガソリン車「T型フォード」でクルマの世紀 
の扉を開いた。フォードを抜いて世界一の販売台数を誇った米ゼネラル・モ 
ーターズは先ごろ破綻(はたん)し、石油がぶ飲み型の終わりを印象づけた。
日本勢はいま、脱・石油資源のエコカーの世紀への扉を開く先頭に立ってい 
る。                                 
                                   
 エコカーの普及には、価格や性能の改善、安全対策などメーカーの努力は 
もちろんだが、政府による購入者補助や、電池に使う希少資源の確保なども 
課題だ。一方、家庭のコンセントで充電できても、発電時にCO2排出が多 
い石炭火力が増えると効果が打ち消されてしまうという問題もある。家庭用 
に限らず太陽光発電など自然エネルギーの普及も進める必要がある。    
                                   
 三菱自動車は5年ほど前、リコール隠し問題で経営危機に陥った。同社が 
電気自動車に賭けたのは、再建への熱意からだったろう。社内には「信頼回 
復はまだこれから」との声がある。実績を積み重ねてほしい。       
                                   
 エコカーの開発・普及は、苦境にあえぐ自動車産業の再生の条件であり、 
新たな発展の機会だ。安全・安価、そして地球環境に優しいことを「メード・
イン・ジャパン」の特徴にしたい。