
(その1)
地球温暖化を阻止できるのは、原子力発電と電気自動車だと主張してきたが、
朝日の科学欄に「原発活用の道筋探る」と題する特集記事が掲載された。いまさ
らという感もするが、とにもかくにも原子力開発にはとかく批判的な朝日が、こ
ういった記事を特集で詳細に取り上げてくれたことに、嬉しさを禁じ得ない。
ただ、特集記事の流れとしては「稼働率の向上や新設は容易ではない」と、懐 疑的であることに方向転換は今回もない。懐疑的であっても、状況の把握はどう であっただろうか。
「原発の稼働率1%分を火力発電で補うとCO2排出量は約300万トン増 えるという。07年度の国内排出量は13億7400万トンで、京都議定書 の基準年(主に90年度)の9.0%増になった。環境省は、98年度並み の稼働率なら5%分は下げられたと試算する」
原子力発電所が正常に運転さえすれば、CO2排出量削減に大いに貢献すると いう情報は正しく認識されているようである。
「国内の原発は現在53基。経産省資源エネルギー庁の試算では、今後10 年以内に新設を計画中の9基で運転が始まれば、稼働率80%で『50%』 の目標をなんとか達成できる。だが、稼働率が70%なら18基の新設が必 要になるという。政府が選択肢を示して検討中の排出量削減の『中期目標』 (20年まで)も、多くは新設9基、稼働率81%が前提だ」
今後10年のうちに高々9基の原発を新設し、稼働率を80%にすれば、20 50年の二酸化炭素の排出量を1990年比50%という大目標達成も不可能で はないということであろう。問題は、それを如何に可能にするかである。
稼働率を80%以上に高めるためには、定期検査の間隔を現行の13ヶ月から 18ヶ月に延ばすこと、それに定格出力を5%ほど高める方法などが、経済産業 省総合資源エネルギー調査会の原子力部会で検討されているという。これらの方 策に対して朝日は、
「ただ、こうした新たな取り組みは、安全性をめぐる十分な科学的データや 技術的な検証、制度的な対応があって初めて実現できる。何より、地元住民 や自治体の理解が得られなければ、実現は難しい」
と、かなり冷ややかな見方をしている。ただ、日本国内の秀逸な専門家を結集 して検討されて結論が出される新しい方策に関して、原発の地元住民や自治体に お伺いを立てる必要がはたしてあるのだろうか、といった疑問を呈するまでには 至ってないのが残念である。
原発新設の計画から運転開始までの期間が20年以上という超長期間かかるの も、一旦トラブルを起こして補修して運転再開までの期間が長くかかるのも、国 の原子力安全委員会などの許可が下りてからでさえ、地元自治体の許可をもらう ための説明期間が恐ろしく日数を要するからではないのか。
この許認可の二重システムこそ改善すべきである。朝日はせっかく良い記事を 掲載してくれたのであるから、国と地元自治体という二重許認可システムの無駄 こそ暴いてもらいたいものである。
原子力の安全行政は、国に一本化すべきは言うまでもない。ただ、地元自治体 にとって、安全審査や検査の結果は詳しく問いただす必要があるだろうから、そ れは電力会社から説明を受けるのではなく、原子力安全委員会なり原子力安全保 安院なりから聞くのが筋ではないだろうか。
「G研」代表