日本経済新聞(2009年3月5日)


<国際1>


      欧州で原発回帰広がる


             伊・スウェーデン 凍結・廃棄を撤回


(その3)


 <本文転載>


 【パリ=古谷茂久】欧州で原子力発電回帰の動きが広がってきた。今年に 
入りスウェーデンとイタリアが相次ぎ脱原発方針を撤回。原子力発電所の新 
規着工を20年以上凍結していた英国が新設再開を昨年打ち出したのに続い 
た。二酸化炭素(CO2)排出の少ない原発を温暖化対策に利用する狙い。 
ロシアのガス供給停止に直面した欧州各国では、電力の国内安定供給を確保 
する思惑もある。                           




   温暖化対策や安定供給

                                                            イタリアは1987年に国民投票で原発凍結を決めたが、同国の電力大手  ENELはこのほど、国内に4基の原発を新設する計画を明らかにした。フ  ランス電力公社(EDF)と組んで合弁会社を設立、2013年までに着工  し20年の稼働を目指す。電力の一部を輸入に頼るイタリアでは自国での供  給を求める声が高まっており、昨年5月に発足したベルルスコーニ政権は原  発を新設する方針に転換した。                                                           スウェーデン政府も原発を段階的に廃棄することを決めた80年の政策を  撤回すると2月5日に発表。現在10基稼働している原発は順次新しい炉に  置き換える。同国政府は政策転換の理由について「温暖化ガスの排出削減の  ため」と説明している。                                                              英国は87年を最後に原発の新規発注を止めていたが、昨年発表した新原  子力政策白書で原発新設再開を打ち出した。今年1月、仏EDFに買収され  た英電力ブリティッシュ・エナジーは、17年の稼働を目標に英国内に4基  の欧州加圧水型炉(EPR)を建設する計画だ。ポーランドでも政府が1月、 20年までに原発を1−2基新設する計画を発表した。                                                環境問題に敏感な欧州では反原発の意見も根強く、ドイツやスペインは脱  原発政策を維持している。                                                             原子力発電によるCO2排出量は石炭や石油、天然ガスなど火力発電の約  20−40分の1とされる。風力や太陽光など再生可能エネルギーの普及が  思うように進まないなかで、原発は温暖化ガス排出削減のための切り札とな  っている。                                                                    欧州への天然ガス供給国であるロシアが昨年、今年と続けてガス供給を停  止。欧州のエネルギー供給基盤の弱点が露見しており、原発回帰は長期的に  ロシアヘの依存度を下げる狙いもある。ガス供給が途絶えた東欧各国ではス  ロバキアやブルガリアなどが、運転停止していた旧ソ連時代の旧式原発を再  稼働させる方針を打ち出した。                     




   シーメンス、ロシアと原発合弁

                                                        【フランクフルト=下田英一郎】ドイツの総合電機大手シーメンスは3日、 ロシア国営の原子力発電会社ロスアトムと原発技術の開発などで提携したと  発表した。両社で原発事業の合弁会社を近く設立。シーメンスはロシアの原  子炉開発の支援を通じ発電機など関連設備需要を取り込み、原発事業強化に  動く東芝や三菱重工業などに対抗する。                                                       合弁会社はロスアトムが50%超を出資する。具体的な事業展開は今後詰  めるが、ロシアの次世代型国産原子炉について、開発から建設、市場開拓ま  で総合的な原発事業を推進。既存炉の更新事業なども検討していく。                                          シーメンスは2030年までに世界で400基の原発需要が発生し、総投  資額は1兆ユーロ(約123兆円)に達すると予測。医療機器とともに原発  事業を今後の経営の柱に位置付けている。                                                      これまで同社は仏原発大手アレバと合弁提携をしていたが、独自の原発戦  略を推進したいサルコジ仏大統領の意向で1月末に解消に追い込まれた。原  発技術の強化が必要だったロシア側は、アレバとの提携解消をとらえ、プー  チン首相がシーメンスのレッシャ一社長と会談し、直接提携を持ちかけてい  た。