日本経済新聞(2008年11月11日)


<社説>

[温暖化ガス] 国内排出2年ぶり増

      昨年度2.3%増 削減達成にハードル


(その1)


 地球温暖化を止めるために我が国が京都議定書で約束した温室効果ガスの排出 量は、今年、つまり2008年から2012年の間に、1990年比で6%減ら さなければならないことであった。

 ところが環境省が11月10日に発表した「速報値」によると、昨年度、つま り2007年度の排出量は、1990年比でマイナスどころか8.7%もプラス になっているというのだ。

 京都議定書で約束した6%減にもっていくためには、1990年比で14.7 %も減らさなければならないということである。

 環境大臣の記者会見の模様をテレビのニュース番組で見ていると「京都議定書 の約束事は何としても守らなければならない。それには国民の皆さんには我慢し てもらわなければならない」と、涼しい顔でおっしゃっていた。ご本人は苦渋の 発言だったかも知れないが、我々には「涼しい顔」に見えたのである。

 増加は2年ぶりだというが、京都議定書の発行以来、我が国が前年度より減ら せたのは2年しかなかったということになる。それもわずかな減少だったという。

 環境省があらゆる知恵を出して国民に協力を呼びかけても、原油高や景気の低 迷にも関わらず、温室効果ガスの排出量を減らすことはできなかったのである。 国民の省エネ運動など「何処吹く風」といったところのようだ。

 2007年度の排出量が前年度比2.3%増になった最大の原因は、世界最大 の発電容量を誇る柏崎刈羽原子力発電所が中越沖地震で長期にわたって止まり、 その代わりとして火力発電所を稼働させたからだという。

 そうであるなら、不必要とも思える超厳重な耐震構造への改造工事を要求する のではなく、工学的に安全性が証明できる段階で早期に再稼働するよう行政指導 もできたはずだ。

 いずれにせよ環境省が打ち出しているこれまでの政策では、京都議定書の目標 値が達成できないばかりか、温室効果ガス排出量の前年度比マイナスすら達成で きないだろう。

 政策の抜本的な見直しが必要不可欠だが、その解決策はいとも簡単、ここで何 度も繰り返し提言しているが、原子力発電所の積極的な推進、それに電気自動車 の爆発的な普及以外に当面はないだろう。

              「G研」代表

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