(その3)
<本文転載>
大々的に「放射能漏れ」と煽(あお)り立てるほど、ひどい漏れが起きて いるのだろうか。 東京電力の柏崎刈羽原子力発電所が新潟県中越沖地震で被災した。その状 況が連日、メディアを通じて伝えられる。 ニュースを知ったイタリアの人気サッカーチームが、予定していた来日を 直前になって中止した、という。 夏のかき入れ時を期待していた新潟県内の旅館やホテルも、キャンセルが 相次いでいる。県の試算によると、風評被害による損害額は1000〜20 00億円にのぼる見通しだ。 もう少し冷静になってはどうか。 「漏れた」とされる放射性物質はごく微量だ。政府と発電所が定めた排出 基準の10億分の1から1000万分の1程度でしかない。経路や物質の種 類から見て、原子炉本体からの漏れの可能性は極めて低い。無論、環境への 影響はない。 大気への放出は排気スイッチの切り忘れが原因で、今は止まっている。地 震による機械的な損傷と言うより、人為的ミスだった。 原子力安全委員会は19日に、鈴木篤之委員長の所感を公表している。 最大のポイントは、緊急時に原子炉で最も重要とされる「止める」「閉じ こめる」「冷やす」、という三つの機能が正常に働いて、今も安全性は確保 されている、ということだ。 原子力施設の耐震設計と建設、さらにその考え方を定めている政府の指針 は基本的に有効だった、と言える。 ただ、特別な耐震強化をしていない排気ダクトや消火栓などの付帯設備は、 大きく損傷している。原子炉の建屋内にある、耐震性をある程度強化したク レーンも破損した。こうしたトラブルは60件以上にのぼる。 しかし、いずれも原子炉の安全性とは峻別(しゅんべつ)して考えるべき 問題だろう。 重要なことは、今回の揺れがどんなものだったかを分析したうえで、炉に どう影響したか、詳しく調べることだ。付帯設備の耐震性をどこまで確保す べきかも課題となる。 原子炉が襲われた史上最大の揺れかもしれない、と言われる。ならば貴重 な知見が得られるはずだ。それを導き出し、すべての原子炉の安全性の向上 に確実に反映させてゆかねばならない。 国際原予力機関(IAEA)も調査に来る。日本は耐震設計などの技術で 世界最高水準にある。それを生かした安全性確保の努力について、しつかり と見てもらい、海外での風評被害を、ぜひ解消してもらおう。 |