出典:<論点>「読売新聞」2001年1月11日

   −−−21世紀の原子力発電を考える−−−

               佐和 隆光(さわ たかみつ)
                 京都大学経済研究所教授

 計量経済学がご専門で、最近はエネルギー問題や環境問題についても発言の増えた京都大学経済研究所教授・佐和隆光先生の良くまとまった論文を拝見した。ここに取り上げ、僭越ながらコメントを付記しながらご紹介したい。

 20世紀最後の十年間、電力業界が直面した「変化」の中で、佐和先生は「看過しえない<変化>」と位置づけた9項目をまず列挙されている。

>第一、地球温暖化問題への関心から、化石燃料の消費を抑制・削減すること
>が不可避とみなされるようになった。
>第二、原子力発電にかかわる大きな事故が国内で二件起きた。
>第三、国の内外で電力自由化が進展した。
>第四、自然エネルギーへの関心が高まり、太陽光や風力を原子力の代替と考
>える人が増えた。
>第五、マクロ経済の期待成長率が2%台から1%台に半減し、今後の電力需
>要の見通しを下方修正せざるを得なくなった。
>第六、家庭電化製品の普及が飽和状態に近づき、家庭用電力需要の伸び率が
>漸減傾向を示し始めた。
>第七、大規模集中型電源を補う小規模分散型電源の実用化の目処が立ち始め
>た。
>第八、1980年代半ばから安値で推移した原油価格が、99年後半から上
>昇基調に転じた。
>第九、欧州諸国の原子力離れがさらに進んだ。
 「電力供給を巡る議論の行き着く先は、電力供給の約三分の一を占める原子力発電を推進するか否かに絞られる」と指摘したうえで、先の「変化」項目の中で原子力は追い風と向かい風の両方が混在しているとも示唆されている。このことは、推進派、反対派、どちらにも反論の余地はなかろう。

 電力の自由化は世界の潮流だが、その主な狙いは原発に替わる電力供給源を確保することであるはず。日本は民間企業の中規模火力発電が参入してきており、また需要の伸びも低下してきているから、「今後10年、たとえ原発の新増設が皆無であっても、電力供給不足に陥る公算は限りなくゼロに近い」と予測されている。これも、大方の専門家筋の意見と大差ないから正しいと思われる。

   (次につづく)