<田原総一朗のギロン堂 そこが聞きたい!>
(その2)
<本文転載>
現在、日本の政界もマスコミも社会保険庁のずさんさによって、5千万件 以上の国民の年金記録が行方不明になっていることで大騒ぎしている。だが、 日本の緊急かつ最大の問題は「環境」である。 6月6日からドイツのハイリゲンダムでG8サミット(主要国首脳会議) が行われた。座長役を務めたのはドイツのメルケル首相で、主たるテーマは 環境問題である。 1997年、京都で世界各国が参加して環境会議が行われ、京都議定書が 定められた。1990年を起点として2012年までに、欧州連合(EU) は地球温暖化ガス(CO2)を8%、アメリカは7%、日本は6%をそれぞ れ削減すると数値目標を決めた。このときメルケルは環境相として参加し、 アメリカからは副大統領だったゴアが参加した。その後、地球温暖化に警鐘 を鳴らす映画「不都合な真実」を制作した、あのゴアである。 ゴアは京都議定書にサインしたが、議会の反対で批准できなかった。その 後、カナダも”脱落”した。 そして日本は、90年から現時点までにCO2排出を削減するどころか、 逆に8%増やしてしまった。2012年までに京都議定書の数値目標を達成 するには、これから5年間で14%削減しなければならないのだが、これは 至難の業である。 それにしても、京都議定書が策定されたのは97年であるにもかかわらず、 なぜ90年が起点となったのか。 前にも触れたが、この点で主導権を握ったのはEUであった。90年に西 ドイツと東ドイツが合併したのだが、東ドイツは共産主義時代の古い発電機、 自動車を使っていたので、CO2をまき散らしていた。だから西ドイツの発 電機や自動車を東ドイツに導入するだけで、総計でCO2の排出量を2けた 削減するのは容易であった。さらに、EUに加盟した東ヨーロッパの国々も 同様にCO2をまき散らしていたので、西ヨーロッパ方式を導入すれば、E UのCO2排出量を大幅に削減することが可能であった。つまり、90年を 起点にすることがEUにとってはきわめて有利だったのである。 これに対して日本は、90年当時、省エネルギー技術で世界の先端を走っ ており、おしぼりにたとえるならば、すでに硬く絞りきっていた。 こうしてみると、2012年を着地点にした場合、日本はたいへん不利な のだが、安倍首相は中国の温家宝首相の来日、そして日米首脳会談をうまく 利用してきた。中国は京都議定書を批准していないが、現在、世界のCO2 排出量の18.1%を占めている。22.1%のアメリカに次いで2位だ。 米中こそは”2大環境汚染国”なのである。 そこで安倍首相は、温家宝首相、そしてブッシュ大統領に、インド、カナ ダ、オーストラリアなど京都議定書を批准していない国々、さらに途上国も 参加できるCO2削減措置を取ろうと提案した。 特にブッシュ大統領は、地球環境問題でEUに主導権を握られて蚊帳の外 に置かれていたため、日本案に乗って主導権を取り返そうと、「安倍提案」 を積極的に受け入れた。 安倍首相は、「2050年までにCO2を50%削減する」とも断言した。 そして、今回のサミットで対立するアメリカとEUの間に入り、中国やイン ド、ロシアも取り込んで取りまとめ役を演じようとしている。 はたして、その首尾やいかん? |