これらはそれぞれ、メリット(長所)もあればデメリット(短所)もある。それらを補完しながら国の電源構成をできるだけベストな形で発電所の建設を進めて行くのが望ましい。野球で例えるなら、先発、中継ぎ、押さえ、と分業して一試合を投げるピッチャーのようなものである。先発完投型といった昔の理想的なエースは、バッティング技術が高度に発達したいま、もはや望むべくもないと、野球の専門家たちはいっている。
原子力発電は、石油火力に替わるエースと目されたときもあったが、電源も一種類に任せるのでなく、それぞれの特長を生かした電源構成、つまりベストミックスが望ましい、というのが今日のエネルギー専門家の統一した見解である。
では、原子力が電源のエースに何故なれなかったのか、色々な理由はあるだろうが、われわれのような専門家からすれば、放射線という、目にも見えない、臭いもしない、得体の知れないモノが放出されているという恐怖感を一般の人々に植え付け、嫌われたことが最大の原因と考えている。
専門家達がいくら素晴らしい技術と推奨しても、民主主義を標榜する国家にあっては、一般国民から拒否されたのでは、無理矢理押し進めることはできない。ここのところは、国家体制に常に批判的な連中からもつけ込まれやすい所以である。すなわち、一般国民を恐怖感にあおり立てれば、体制が進める原子力発電所などの建設計画はとん挫しがちになることは明白だ。
原子力が、電源のエースになれなかった第二の理由は、放射線と緊密な関係にある放射性廃棄物の処理処分の問題である。原子力発電を運転すればするほど、他の火力発電などと同じように廃棄物を排出する。しかも、その廃棄物は、「得体の知れない」という悪い印象を持たれた放射線を放出する。
一方、原子力がエースになれる資格は大いにあったが、その理由については今回は割愛しておこう。放射性廃棄物の処分問題について、日本経済新聞の記事を中心に、われわれの見解を表明しておきたい。
<Sunday Nikkei>「サイエンス」 ===地層処分で環境から隔離する=== 「日本経済新聞」(2000年11月5日) >◆核のゴミ地下深く封印 <前文> > 原子力発電所から出る“核のゴミ”をどう処分するか−−。日本を合め、 >原子力にエネルギーを求める国にとって大きな課題だ。最終的には地下深く >に埋めて隔離する「地層処分」が考えられている。国内では、その可能性を >探る研究施設が北海道幌延町に建設される見通しになった。実現に向けて動 >き出す地層処分とはどんな技術なのか。地層処分しようとしているのは、低レベル放射性廃棄物ではなく、使用済み燃料を再処理して出てくる高レベル放射性廃棄物が対象である。つまり、ウランなどの原子核が核分裂して分割されたあとの生成物がそれである。
核分裂生成物には、少量とはいえ放射能が半分になるまでの半減期が長い放射性物質も含まれるから、長期間、環境から隔離しておかなければならない。そのためには、廃棄物を強化ガラスでまず固め、それをステンレスの容器に入れ、地下深い安定した地層の中で静かに眠らそうと言うのが、世界の統一した考えである。