電気新聞=2000年10月12日

  <時評・ウェーブ>

    「温暖化防止の決め手は原子力」

                 電中研顧問・中村政雄


 元読売新聞編集委員で、現在は電力中央研究所顧問をされている中村政雄さんが、業界紙の「電気新聞」に「温暖化防止の決め手は原子力」と題する「時評」を書いておられました。

 最近の動向は、電力の自由化で小規模な火力発電建設容認の方向であったり、自然エネルギー指向で原子力軽視にあることから、地球温暖化の問題はどうなったのだろうか、その防止策のエースと目された原子力開発はどうなったのだろうか、と気をもんでおりました。

 そんな折り、今回の中村さんのご意見を電気新聞で拝見し、「まさにこのとおり」と、思わず手を叩いたのでした。

<1段1行目から>
> ダイオキシンであれほど大騒ぎした日本人が、なぜ地球温暖化には平静な
>のか。あの程度の微量なダイオキシンより温暖化の方が、はるかに大きい問
>題である。私たちは温暖化に鈍感でいいのだろうか。
 「喉元過ぎれば熱さ忘れる」の諺どおり、気候温暖化変動枠組条約第三回会議(COP3)が京都で開催されたころは、何がなんでも炭酸ガスなど温暖化効果ガス排出削減に、世界に範を垂れて頑張るんだという意気込みが、政府はもちろんのこと、官民上げて意気軒昂でありました。

 もちろん、マスコミも、炭酸ガス、温暖化などといった用語が見られない日がないほど、連日、競って地球温暖化問題を取り上げておりました。

 ところが、その後、原子燃料加工工場で臨界事故を起こしたこともあり、原子力界の信頼性は地に落ちてしまい、「地球温暖化防止の決め手」のエースがないまま今日に至っています。自然エネと省エネで何とか中継ぎさせようとしているのですが、9回と言わないまでも、5、6回くらいまで確実にもってくれる先発投手はいないものかと、エネルギーや環境関連の行政府は反原発派のリーダー達までお伺いをたてる始末でした。

 ところがそんなうまい話しは、そんじょそこらに落ちていません。永久追放するほどの事故だったと反対派は主張するかも知れませんが、法律違反する業者が起こす事故にまで、業界全体で責任をとらすというのは、いくら考えてもやりすぎではないでしょうか。

<2段目、11行目から>
> 日本で温暖化防止に盛り上がりがないのは、学者とマスコミの不勉強によ
>る。温暖化の怖さを私たちはもっと知る必要がある。
 「温暖化の恐さ」と一概にいわれましても、自分の身の回りだって満足に整理できない者が、地球の周りに目がいくはずがありません。この対策は、国民一人一人が理解するまで待つ、といった悠長なことはいっておれないのではないでしょうか。

 そこはもう関係行政府がリーダーシップを大いに発揮して、温暖化防止につながることならなりふり構わず邁進していただかなければならないでしょうね。

> 私が訪れたマーシャル諸国共和国の首都マジェロは、太平洋にある典型的
>な環礁だが、温暖化による海面上昇で波による侵食が進み、島が切れそうに
>なった。海水が地下にしみ込んできて十年以上前から井戸水は飲めなくなっ
>た。天水に頼るしかないが、温暖化による気象異変で、雨が以前ほど降らな
>くなった。人は水がなければ生きていけない。米国政府の提供した海水淡水
>化装置のおかげで島の人々は生きている。

 こういう情報は大いに紹介していただきたいものです。

<3段目、12行目から>
> 温暖化にインテリの関心が低かった理由の一つに、米国のロビー団体「地
>球気候連合」の活動があった。BP、ロイヤル・ダッチ・シェル、フォード、
>GM、デュポンといった世界の巨大企業が参加し、温暖化を否定していたか
>らである。
 ははー、石油の恩恵にどっぷり浸かってきた石油業界と自動車業界の企業ですね。かつて石油業界は原発反対運動を裏で支えているといった流言もありましたね。

<4段目、14行目から>
> 省エネ技術や新エネルギーの開発は、格段に活発化するに違いない。それ
>は結構なことだが、温暖化防止にどのくらいの実効をあげることが出来るだ
>ろうか。
 まさしく That is question. ですね。ただ、不確かな温暖化防止策を論じている時間的ゆとりはないのじゃないでしょうか。

<5段目、5行目から>
> 原子力発電がもっとも効果的な温暖化防止策だ。火力発電を原子力に代え
>るだけでなく、ガソリン車を電気自動車に代えるところまで原子力発電を活
>用するようにしたい。
 そのとおりなのですが、そう思っている人しか読まない業界紙でいくら主張しましても、虚しいばかりでしょう。読売新聞の論説委員をされていたころもこのような主張をされ、紙面に掲載されたのでしょうか。

<5段目、15行目から>
> 素直にこれまでの対策を検討すれば、原子力発電以外に切り札はないこと
>がわかる。環境庁は以前から原子力の理解が足りない。原子力行政の縄張り
>の外に置かれたからか。
 日本の環境庁は原子力行政の縄張りの外に置かれているのですか? 大体、中央の官庁に縄張りなどあることがおかしいですね。

<5段目、最後のパラグラフ>
> まず経済界全体がその気にならないと雰囲気は盛り上がらない。国民全体
>をその気にさせるには、少なくとも電力業界の方々がいま地球上で、温暖化
>でどんな現象が起きているか知ってほしい。
 地球温暖化のこと、電力業界の人もあまり知らないなら、これも問題ですね。われわれは、一番知らないのはマスコミだとばかり思っていました。それにしても中村さんのような方は、大手マスコミにいつまでもいて、今回のような主張を、読売新聞のような全国紙で続けていただきたかったですね。

       「G研」代表