> 安価な安定供給 実行せず

> カリフォルニア州の電力不足深刻化と価格高騰は米経済に打撃を与える恐
>れがあり、州政府、連邦政府とも危機感を強めている。デービス州知事の要
>請を受け、連邦エネルギー規制委員会(FERC)は原因究明に乗り出した。
>消費者を保護するには政府の価格抑制もやむをえないとする声もあり、規制
>緩和に逆行する動きも表面化してきた。
 州政府、連邦政府とも、この電力不足深刻化と価格高騰に危機感を強め、その原因究明に乗り出した、としています。これは当然の行動でしょう。日本もこのアメリカ政府の緊急対応の行動力を肝に銘じておかなければなりません。

> 米国では州ごとに電力の小売り自由化が進んでおり、不公正競争の監視や
>州間取引に関する統一ルールはない。送配電会社の電力調達手段にも一定の
>制限があり、不完全な自由化ともいえる。カリフォルニア州では需給ひっ迫
>に伴う調達価格の上昇分が小売価格に転嫁されており、自由化を安価な電力
>の安定供給につなげるという当初の目的に結び付いていない。
 ルールつくりには長けており、しかもビジネスの不公正競争を最も嫌うアメリカでも、電力の小売り自由化に際して当然起こる可能性が考えられる「不公正競争の監視や州間取引に関する統一ルール」はまだ整備されていないというではありませんか。そして、「自由化を安価な電力の安定供給につなげるという当初の目的に結び付いていない」というアメリカの現実に我々はもっと注目するべきでしょう。

> 同州サンディエゴの消費者組織は州政府に、電力小売価格の凍結を申し入
>れた。この申し入れは受け入れられなかったが、他地域でも共感を呼んだ。
>FERCのヘッカー委員長も「長期的には競争市場が望ましいが、消費者保
>護の観点から電力の供給者が政府と連携して価格変動リスクを減らす行為は
>妨げない」と述べ、緩やかな価格統制を認める姿勢を見せている。
 自由化を導入して供給者を競争させれば価格が下降するものと信じて進めてきた消費者組織が、自由化が進んでから思惑に反して価格が急騰し出すと、今度は規制当局に電力小売価格の凍結という最も厳しい規制を申し入れました。素人の勇み足と笑い飛ばすわけにはいきません。日本もいずれこのような事態に出くわす可能性が大いにあるからです。

> 通信事業者の競争促進をめざした米通信法にならい、電力市場の公正競争
>ルールや消費者保護策を明確にした法案は米議会に既に提出されている。し
>かし、既存の電力事業者の反発などから自由化を疑問視する声も出て審議は
>進んでいない。クリントン大統領は今回、連邦法の早期成立をめざす方針を
>表明したが、現政権での成立は難しいとの見方が有力だ。
>                       (ワシントン=安藤淳)
 アメリカ国内では、この電力自由化に対する連邦議会から業界、消費者団体など世論の混乱が早くも見られます。わが国の通産省も、本省ビルの電気代が高々4%下がったというくらいで喜んでばかりはいられないでしょう。今からでも遅くはありません。アメリカの自由化導入2年後の現実を調査する専門家チームからなる調査団を1日も早く派遣するべきです。我々や日本経済新聞が杞憂に過ぎないなら、それに勝ものはありません。

 原子力開発にも言えることですが、がむしゃらに進むばかりがいいとは限りません。常に目を大きく開き、間違いに気が付けば、直ちに引き返す勇気も肝要でしょう。関係する諸姉諸兄に今一度、この電力自由化制度導入の是非と原子力開発推進の必要性を再度ご検討賜りますことを願い上げます。

     「G研」代表

  事務局注)このページは8月8日付けの「日本経済新聞」から、表題の記
       事を全文忠実に転載させていただきました。誤字脱字があれば
       当方の責任です。