
読売新聞(2006年5月31日)
<21世紀の選択==エネルギー>
(その2)
イギリスの誤算は、CO2排出量の予測にとどまらず、北海油田の埋蔵量と 風力発電の開発への思わぬ抵抗だったという。
「しかし、イギリスにとって最大の誤算だったのは、北海油田の枯渇が予想 以上に早く進んだことだ。また、自然エネルギーの開発も他国に比べ遅れてい る」
「イギリスはヨーロッパ諸国の中でも、風が強く、風力発電に最も適してい るとされる。しかし、鳥の保護を求める環境団体の反対や、防空レーダーの障 害になるといった軍事上の理由などから、風力発電はあまり進んでいない」
世界では風力発電の開発を最も指示しているのが環境保護団体だが、イギリ スではその環境保護団体から鳥類の保護を訴えて風力の開発に反対していると いうから、何をかいわんやである。
石油火力や石炭火力はCO2を排出するからダメ、原子力は安全性に疑問が 残っているからダメ、風力も鳥に傷つけるからダメ・・・、ダメダメダメで、 どんな電力ならいいのかな?
「一方、イギリスは1956年に世界で初めて原子力発電の商業運転を開始 した国だが、原子炉の耐用年数は最長で45年程度とされ、すでに22基か運 転を停止している。現在は23基(合計出力約1200万キロワット)が運転 中だが、新設計画はなく、2023年にはサイズウェル発電所の一基(119 万キロワット)を残し、すべて止まる見通しだ」
「イギリスは北部のスコットランド地方に水力発電施設が数多くあるが、運 転停止後の原子力発電の発電量を賄うのは、施設整備が比較的容易な火力発電 に頼らざるをえない」
日本の最初の商業発電炉として輸入したのがイギリスからの東海1号機だっ たことからも分かるように、かつてのイギリスは原子力発電の開発が盛んであ った。読売の記事によると、最盛期には45基の原発が動いていた。それが現 在、23基になり、このまま新規の建設がないと、2023年には1基だけに なるという。
今後2023年までに、運転を停止する原発22基、1080万キロワット 分を水力発電所を新規に建設して供給させるには、物理的にも不可能らしい。 では火力発電ということになるが、それだとCO2排出量を大量に増やすこと になる。あとは原発を新規に建設していく他、イギリスの選択する道はななさ そうである。
「イギリス政府はこの夏、新たなエネルギー政策を発表する。焦点は原子力 の扱いだが、「イギリスが持つ選択肢は限られており、原子力推進にかじを切 る可能性は相当高い」(船山義之・日本エネルギー経済研究所研究員)とみら れる」
「原子力推進にかじを切る可能性は相当高い」程度ではすまないだろう。 「原子力推進にかじを切るしかイギリスの生きる道はない」と、我々はコメン トしておこう。
北海油田での原油生産量が2000年以降、急速に減少していることは、こ の読売の特集記事が詳細にレポートしてくれている。
最盛期の1999年の生産量が日量590万バレルだったのが、2005年 には200万バレルを割っているから、5年間で3分の1まで落ち込み、天然 ガスはすでに純輸入国に、原油は2006年にも純輸入国に転じるだろうとい う。
これから見ても、イギリスは原子力を復活させる他なさそうである。ただ、 復活させるにも難問は山積している、と我々は警告したい。。
イギリスは、世界で初の商業発電用原子炉の開発に成功したほど、原子力大 国であった。それが一度、原子力開発から撤退する方法をとらざるを得なかっ た。ほんの一時期撤退しただけで、現に23基の原発は運転を続けているから、 今後数年先に新規建設を開始するなどは、いともたやすいことだろう、と思う 方がいても不思議ではない。
しかし、そうは問屋が下ろしてくれないのが、現実なのだ。長期の中断後、 新規に建設部門を立ち上げるとなると、技術者の訓練から始めなければならな い。人材不足もまま、急いでプロジェクトを立ち上げると、近い将来、思わぬ 不祥事を招きかねない。それを避けるためには、技術の継続を守ってきた日本 などが、今度は助っ人に出る番だろう。
読売の特集には、北海油田の現状や、英王立国際問題研究所研究員のインタ ビュー記事なども掲載せれている。これらも併せて参考にして、今日、イギリ ス、ひいてはEU諸国が直面しているエネルギーや環境問題の正しい姿を理解 してもらいたい。
「G研」代表