日本経済新聞(2005年7月27、28日)

<ゼミナール> 石油と世界 28
  [代替エネ−原子力]  欧米などで再評価の動き

<ゼミナール> 石油と世界 29
  [代替エネ−原子力]  規模拡大、課題は多く

<その3>


<7月28日分の本文転載>

<ゼミナール> 石油と世界 29                  
                                  
  [代替エネ−原子力]  規模拡大、課題は多く          
                                  
 原子力発電の長期的な展望はどうだろうか。世界のなかでもアジア地域 
における原子力発電の普及がもっとも注目されている。         
                                  
 中国はすでに原子力発電所の増設計画を表明している。規模を現在の約 
900万キロワットから2020年までに約3600万キロワットに拡大 
する予定だ。同じくエネルギー需要の急増するインドはこの間に約270 
万キロワットから2千万キロワットに拡大する計画である(資源エネルギ 
ー庁による)。                           
                                  
 世界的な原子力発電の伸びについて、米マサチューセッツ工科大学(M 
IT)は2003年の報告書「原子力の将来」で「温暖化対策として50 
年までに現在の約3倍、10億キロワットの発電規模が必要になる」と提 
言している。全体の電力需要が急増するのに合わせ原子力発電の規模拡大 
が求められている(原子力のシェアは今後も2割弱で大きく変化しない見 
通し)。                              
                                  
 これを達成するうえで克服すべき課題は多い。            
                                  
 第一に原子力発電で生じる放射性廃棄物の管理や処分を円滑に進める必 
要がある。投資リスクや社会的受容などの点からも、この問題に解決のめ 
どが立たない限り、さらなる普及は難しい。              
                                  
 第二に、電力自由化のなかで原子力発電の投資リスクを低く抑えること 
が重要だ。原子力発電所の建設では初期投資がかさむので、電力会社が新 
規に建設しようとしない。この負担を低く抑えることが大きな課題である。
                                  
 第三は、安全性、経済性に優れた新型原子炉の開発である。30年ごろ 
には、多くの原子力発電所が更新期を迎える。新設の発電所は安全性、経 
済性ですぐれたものであることが期待される。             
                                  
 第四に、核拡散の危険を最小限に抑えることだ。北朝鮮はもとより、イ 
ランなどについても平和利用計画の裏側で、核開発の疑惑が強まっている。
核拡散や核テロリズムの危険が高まるようでは、今後の原子力発電の普及 
は期待できない。これらの課題を乗り越えることが何より重要である。  
                    (日本エネルギー経済研究所)