読売新聞(2005年5月30日)

<社 説>===============「エネルギー白書」

         日本を脅かすアジアの消費拡大

<その2>


 日本のエネルギー自給率は、水力発電を中心にわずか4%しかない。4 
0%の食料自給率に比べても低さが際だっている。           
                                  
 経済産業省がまとめた今年のエネルギー白書は、エネルギーの安全保障 
に焦点を当てた。                          
                                  
 昨年来、中国、インドなどアジアの需要増を主因に原油価格が急騰して 
いる。需給逼迫の市場構造は当分、変わりそうにない。エネルギー安全保 
障の重要性はさらに高まることになるだろう。             
                                  
 日本の自給率は準国産エネルギーとされる原子力発電を加えても、19 
%にとどまる。これは15%のイタリアは上回るものの、73%の米国、 
51%のフランス、39%のドイツより、はるかに低い。エネルギーは日 
本の大きな弱点だ。                         
                                  
 供給が潤沢で、価格が安定していれば弱点を意識しないで済む。しかし、
そうした幸福な時代は終わった。                   
                                  
 主な資源の2005年1月のドル建て輸入価格は、02年1月を100 
として、ウランが219、原油が199、発電用石炭が148、液化天然 
ガス(LNG)が130となった。原油だけでなく、他の資源も軒並みに 
急騰している。                           
                                  
 その理由として、白書は1980年代後半の資源価格下落で開発投資が 
伸び悩んだところに、アジアのエネルギー消費が急拡大し、需給が逼迫し 
たことを挙げる。これに中東などの政情不安、カナダのウラン鉱山の事故、
投機資金の流入といった要因が重なった、と分析する。         
                                  
 第一次石油危機前の71年に石油換算で7.4億トンだったアジアのエ 
ネルギー消費量は、03年には27.7億トンに増え、世界全体に占める 
シェアは14%から29%に倍増した。中国などの伸びで2030年には 
59.7億トンに達する見通しだ。                  
                                  
 将来にわたってエネルギーの安定供給を保つため、日本は石油備蓄の早 
期拡充をアジア諸国に訴えるべきだ。万一のとき、備蓄があれば産油国に 
殺到しないで済み、暴騰を抑えることができる。            
                                  
 日本の進んだ省エネルギー技術を、各国に広げることも大切だ。    
                                  
 日本と中国は、東シナ海の資源を巡って鋭く対立している。この問題で 
原則を曲げることはできない。ただ、省エネ技術協力など両国の利害が一 
致する分野では粛々と協議を進めたい。中国の資源浪費体質の改善は日本 
の利益にもなる。                          
                                  
 国内政策では、原子力発電の安全で着実な推進が欠かせない。原発は新 
設とともに稼働率の向上を目指すべきだ。               
                                  
 ウランの高騰には使用済み核燃料の再利用が有効な対策となる。ウラン 
を無駄なく燃焼させる高速増殖炉の開発を、これ以上遅らせるわけにはい 
かない。