
日本経済新聞(2005年3月1日)
[中国原発入札]
<その1>
中国が新規建設を計画している加圧水型原子力発電プラントの国際入札が行われ、2月28日に締め切られたことは、この前に紹介した朝日新聞などで報じられていた。また、その入札に、フランスのフラマトムグループとロシアの原子力施設輸出会社に加え、米国のウエスチングハウスと組んだ三菱重工業が応札したことも明らかになった。
日本の原子炉メーカーが、単独ではもとより、外国の企業と組んでも、原子力発電プラントの国際入札に参加するのは初めてである。その最大の理由は、日本政府から協力が得られなかったからである。
「政府が外国政府に日本企業を「売り込む」のは極めて異例の反応だ」と、この日経の記事の中で述べているが、発電プラントや新幹線など、大型プロジェクトを民間の企業などが独自で外国政府に「売り込む」のは非常に難しい。
この場合、日本政府が「民間企業」を売り込むのではなく、「日本技術」を売り込むという考えで、業界と政府がタッグを組んで活動しなければならないだろう。フランスなどは、シラク大統領をはじめ、多くの政府高官がフランスの技術を売り込んでいるから、少なからず成功を収めている。
とくに原子力分野では、たとえ平和利用に限定した二国間協定が成立していようと、核兵器への転用、第三国への移転などを厳重に制限する難しさがある故、政府の協力なくして民間企業が国際ビジネスに発展させることは、極めて難しいと言わざるを得ない。
海外と国内に大きな格差が厳然と横たわっているような一つの技術を産業として根付かせるには、まず海外からの導入から入り、ある時点から海外からの進入を徐々に制限しながら国産化を図りつつ国内企業の育成に努める。
限りなく100%に近く国産化に成功したら、今度は国内企業が海外に進出できるよう、政府はあらゆる便宜を図らなければならない。
わが国の原子力産業政策は、国産化には一応成功したが、その後の産業の国際化には、日本政府は遅れをとったといえよう。
原子力先進国との平和利用協力協定には、世界に遅れることなく次々に調印にこぎ着けていったが、これから原子力開発に乗り出そうとする、いわば発展途上国との間の協力協定の交渉には、日本政府は何故か腰が重かった。
三菱重工、日立製作所、東芝と、わが国が誇る原子炉メーカーは、いずれも原子力以外の分野ですでに国際化に成功した大企業であるが故、原子力分野でも政府がバックアップしなくても、国内から海外へと発展させることができると、日本政府は見ていたのであろう。
今回の中国の原子力発電プラントの入札に、三菱重工が、ウエスチングハウスと組んだ形とはいえ、参加し、それを日本政府がバックアップの意志表示をしたということは、とりもなおさず大きな進展といえよう。 「G研」代表